※軽くしねたっぽい
背中を預けると、柱が悲鳴をあげた。
膝を折って座り広い部屋を眺める。同室の人間はまだ帰ってきていなかった。
風呂上がりで湿った髪の毛が服に張り付いて冷たい。そこに夜気も加わって、仙蔵の体温は容赦なく奪われていった。
きっと、あいつの体温も。
急速に冷えていっているであろう身体を想像して、ほうと息を吐いた。
「……つまらないな」
人をからかうことを趣味の一つにしている仙蔵としては、同室が居ないのは少々物足りない。
近くにいなければ、頬をつねることも額を弾くことも出来ない。
口を、吸うことも。
どこに触れることも出来ないのだ。
いじって遊んでからかって、最後に少しだけ甘やかして。そうして顔を真っ赤に染めるのを見て再びからかって。
なのに。
いつまで待たせるつもりだ、い組のくせに愚図な奴だ。
なんて毒づいても何も変わらない。
あいつは帰ってこない。
部屋は、広いまま。
「早く帰ってこい、文次郎」
そう言えば最後に見た顔も、赤く染まっていた気がする。
赤く、あかく。
今頃あいつは、どこぞの地で冷えた身体を抱えているのだろう。
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死ネタ(?)で仙文(?)
何かの実習の後的な話でした。