※発言的に現パロっぽい?
 実際あんま時代関係ないです




ぐえ、と蛙が潰れたような呻き声をあげて、そいつは倒れた。
名前も知らない男。鼻は折れてて歯も数本なくなっているという悲惨な状態にも関わらず、何の感慨もうかばなければ罪悪感も無いのは、別に俺が冷酷だとかそういうんじゃないと思う。
こいつは俺にとって敵であり、慈悲の対象範囲外にいる。それだけ。
だって、こいつのしたことを考えれば当然だろう?

「わあ。勘ちゃんが暴れてるって言うから来てみたら…」
「本当に荒れてんな」

背後から声。
片方は鉢屋で、一緒にいるのは珍しく雷蔵じゃなかった。

「鉢屋が兵助と一緒なんて、何かあったの?」
「雷蔵は違うヤツをボコりに行ったからさ」

鉢屋が雷蔵をおいて、わざわざ俺の方に来たってことは。

「俺、危険視されてる?」

少なくとも、普段は温厚でニコニコしてるのにキレるとえげつない雷蔵よりはマシなつもりだったんだけどな。
そうこぼすと、お前も同じだと鉢屋が顔をしかめる。

「それに、雷蔵の方は人数が多いからね。勘ちゃんのが先だと思って」
「多いって、どれくらい?」
「四、五人はいたかな」

新規のヤツらだろうか。だとしたら、八左ヱ門はなんてタチが悪いんだろう。
一昨日も、先週も、先々週も、そのまた前にも。俺や雷蔵ときには鉢屋や兵助も所謂「ケンカ」をしている。
けど、無差別な訳じゃない。
俺だって殴られるのは嫌だ、普通に痛い。それでも相手を力ずくで捩じ伏せるのは、この沈めた(沈めてきた)ヤツらがどうしようもない下衆だからで。

「八左ヱ門てば、どれだけストーカーされれば気が済むんだろうね?」
「あいつマゾっぽいからな。嫌がらせされんのが嬉しいんだろ」
「誰彼構わず優しくするからだよね」
「それがはっちゃんの美徳だからしょうがないのだぁ」

まあ、俺もその優しさとか明るさに惹かれた人間の一人だから、他人のコト言えないんだけど。
好きな子にまとわりつく有害なお邪魔虫は排除しなきゃならない。
人を殴る感触はキモチワルイし、手も傷むから面倒なんだけど。

「おぉい、勘右衛門!」
「あ。」

前方からやってくるあの心配そうな顔とか、バカみたいな幸せそうな笑顔を見ると全部吹き飛ぶんだから、仕方がない。
手を汚す血をそっと服の裾で拭って、最大限に優しく微笑んだ。


裏返しヒーロー

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ニコさんの魔性のじゅうよんさいに萌えて、誰彼構わず惹き付ける魔性の竹谷を書いてたはず←
なのに当の竹谷くんが一瞬しか出ないとは何事(´・ω・`)

雷蔵ごめんね。勘ちゃん大好きです笑


 


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