※学パロ
久々知くんちょっと気持ち悪い←
オレンジの西陽で暖められた教室は、しかし冬の刺すような冷気で寒かった。
たった今、はっちゃんが教室を出ていった。担任に居残りプリントを提出しに行くんだと。従って、10メートル四方くらいの箱に残されたのは、俺と、はっちゃんの荷物だけ。
中に教科書なんて一冊たりとも入っていなさそうな、ひしゃげたスポーツバッグの上に鎮座するはっちゃんのマフラー。それはまるで俺を誘うように、バッグからするりと滑り床に落ち着いた。
埃がついてしまう。
拾うだけ、そう、拾うだけだ。と誰にともなく言い訳をして手に取ったそれはけして高級なものなんかじゃない、なのに俺の手に柔らかさと暖かさと、幸せを与えてくれる。
はっちゃんの、八左ヱ門のマフラー。
八左ヱ門と名前が付くだけで全てが美しく、尊いものに思えてくるから不思議だ。
ふわりと重さを感じさせないそいつを本来あるべき場所に巻いた。ただし持ち主ではなくて、俺の、首。
もこもことやわこい生地に鼻先を埋めると、冬の、冷たさを和らげる優しいお日さまのにおいがした。たまらなくなって、そのまま息を吸い込む。
「兵助、なにしてんだ?」
突然はっちゃんの声がすぐ傍からして、吃驚して思わず飛び上がった。
どうして、いつの間に、どこから見られてた!?
なにしてるかなんて問われても、まさかはっちゃんのマフラーではっちゃんのにおいを堪能してたなんて本人に言える訳がない。
焦りで全身の血が顔へ駆け上がるのがわかった。心臓の音も、耳の奥でドクドクとうるさい。
はっちゃんが怪訝そうに眉をひそめた。
「なんか顔赤いけど、大丈夫か?」
「ん!? ううん大丈夫! もう死ぬほど全然大丈夫!」
「いや、死なれたら困る」
ああああああなに言ってるの俺! めっちゃ不審! もういっそ死ね自分!!
「兵助が俺のマフラー使うなら、俺は兵助の借りようかな」
「へぇっ!?」
「え、ダメ?」
寒いんだけど、と困ったように笑うはっちゃんに、全然大丈夫! とさっきと同じ返答をして、自分のマフラーを押し付ける。
藍色のそれを首に巻き付けたはっちゃんが鼻の頭を赤くして、兵助のにおいがする、なんて宣ってはにかむから。
未だに鼻腔を刺激するはっちゃんのマフラーを溢れる血で汚してしまったのは俺のせいじゃないと思うんだ。
あついね。
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ちょっと気持ち悪い久々知くんでした。
久々知くんは、好きな子のリコーダー吹いてみるとかね、若気の至りでやっちゃうんと思うんだ←