びくびくと痙攣する体を冷えた瞳が見つめていた。
かかわったら最後まで、だそうだ。
情けをかける訳でもなく、勝利に安堵するでもなく、ゆるゆると死にゆく命をただ見つめるその背中は微動だにしない。まるでそちらが死体であるかのように。
何が楽しいのか分からない。こんな月明かりも届かない深い森の真ん中で、名前も知らない奴が壊れるのを見届ける。いったいその行為の何が楽しいんだか。
付き合わされるこちらの身にもなってほしいものだ。私は早く学園に戻って、雷蔵におかえりを言ってもらって温かい風呂に入って美味しいご飯を食べて、そして柔らかい布団にくるまれて眠りたい。嬉しいことに明日は休日だ。好きなだけ寝坊できる。
はちだって同じはずだ。早く学園に戻って、いつもの日常を取り戻したいに決まっている。
「おい、はち。帰るぞ」
「うん」
ぼさぼさ頭が小さく上下に動いた。が、その視線がこちらを向くこともつま先が学園に向くこともなかった。
「はち!」
声をかけたのと同時、う、と小さなうめき声とともにその生き物が息絶えた。
ああ、これでやっと帰ってくる。
もう一度級友の名を呼ぶと、ぴくりと肩が震えた。そうしてやっとこちらを見るあたたかい瞳。さっきまでの気味が悪いほどの静かさはどこへやら、はちはけろりと笑ってみせた。
「…帰るぞ」
「ああ!」
いやぁ腹減ったなーなんて呑気に笑うはちに頭が痛くなる。
もうお前とは実習したくない。ぼそりと呟くと機嫌を損ねたらしい、唇を尖らせるこいつが私はちょっと嫌いだ。
安心、安心。
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ちょっと病んでるのを書きたかったんですけども難しいなぁ。
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