※学パロ
舞台上で動き回る彼は、それはそれは輝いている。
最初はいやいやだった演劇だが、かかわったら最後まで、の熱血精神で練習の手を抜いたりは絶対にしなかったらしい。
その美しい精神の賜物がこの輝きなのだとしたら、それはなんて素晴らしいことだろう。そしてそれを客席から眺められる自分はなんて幸せなのだろう。
小さめのドレスに身を押し込め、コルセットで腰回りをギュウギュウと締め付けられながらも必死で演技する彼は照明装置からの熱気でうっすら汗をかいている。色っぽい。きれいだ。
黒いローブを纏った怪しげな魔女から真っ赤に熟れたおいしそうなリンゴ。それを一口かじった瞬間、けっして華奢とは言えない体がぐらりと揺れて、彼はその場に倒れた。魔女の甲高い笑い声は長く尾を引いて、体育館中に反響する。
ああ、今すぐ舞台に駆け上がって、憎き魔女を引き倒せたら。
ガラスの棺におさめられる彼の冷たい身体を抱きしめられたら。
命を失ってもなお美しい赤さを失わないその唇に自分のそれを重ねて、彼の体を侵す毒をこの愛で塗り替えられたら。どんなに良いだろう!
「顔が気持ち悪いよ、兵助」
隣でげんなりと辟易したように口をへの字に曲げる級友。
だけどさ勘ちゃん。君だって、おれと全く同じことを考えてるんだろう?
固く握られた拳におれも拳をこつんと軽くぶつけて、舞台上で輝く唇を奪う双子の王子をどうやって破滅させようか、思考をめぐらせる。
とにかく幕がおりたら、楽屋がわりの武道場に殴り込みに行かなければ!
王女争奪戦!
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ちょっと分かりづらいですがいちおう竹雪姫が総受けな感じで。