※現パロ
ポケットに手を突っ込むと、カサリとガムの脱け殻だけが手に触れた。今おれの元に残ってるガムは、口の中でいびつに形を変える味の無くなったやつだけ。
ああ、これは帰りにコンビニに寄らなければ。
踵を踏み潰した上履きを下駄箱に入れて、靴裏のすり減ったスニーカーを取り出す。そこで気が付いた。
雨だ。
さっきまで遠く青く晴れ渡っていた空は鼠色の雲のせいで手が届きそうに近い。そこから降り続く雨は残酷ではないが面倒な程度。つまり傘が要るくらい。
あーあ。
天気予報のお姉さんをちょっとだけ恨んだ。
まあ、どうせコンビニに行くんだし、傘もついでに買おう。それまでには濡れ鼠だろうけど。学ランを傘にすればいいかな。
昇降口の大きくせりだした軒下から出ようとしたとき、未だそこで立ち往生してる人影を見つけた。
「あ」
「え?」
長い睫毛。黒く艶やかな髪。白い肌に細い身体。
女子が口を揃えて羨ましいと言う見てくれのそいつは、たしか隣のクラスの秀才でお坊っちゃんの…
「兵助だ!」
「へっ?」
大きな目がぱちくり瞬きする。
自分でも予想外にでかい声が出て、慌てて口をふさぐ。
そうだよな。勘ちゃんの話を聞いてたからおれは久々知兵助のことを知ってるけど、あっちからしたら見ず知らずのやつに急に呼び捨てにされたんだもんな。そりゃ驚くや。
「ごめん」
苦笑を向けると、兵助はまだ戸惑ったような表情のままぺこりと頭を下げた。
「雨宿り…です、か?」
「あ、でも、止みそうにないから」
「そっか」
同学年のやつと敬語でやり取りしてるってなんか変な感じだ。でも、良いとこのお坊っちゃんだと思うとなぜか自然に敬語になってしまった。
どうやら久々知兵助は濡れる選択をしたらしい。
今にも雨の中に歩き出しそうな細い肩をつかまえて、学ランを頭から被せた。
「あんた細くて見るからに風邪とかひきやすそうだからさ。それ使っていいぞ…、ですよ」
「え!?」
「明日勘ちゃんにでも渡してくれればいいからさ。それじゃ」
バイバイ兵助!
泥濘でぐちゃぐちゃの運動場を半分くらい突っ切ったところで振り返ると、雨でけぶる景色の中、久々知兵助が恐る恐る学ランを頭に乗っけていた。
そう言えばおれ昼休みにうさぎ小屋に行ったんだけど、動物くさくなかったかな。
あまりきれいな学ランじゃないけど、これで勘ちゃんの友達が濡れずに済むなら良いな、なんて。
ずぶ濡れで入ったコンビニの店員がちょっと嫌そうな顔をしてたけど気にならないくらい、この時のおれは何故だか浮かれていた。
それはもう、ガムを買うのを忘れるくらい。
衝動的行動
----------
なんか竹久々っぽいけど久々竹ですと言い張る((
久々知くんは内心ハァハァしてますからね!
竹谷の学ランをおとなしく被ったのはより近くでハァハァできるからだからね!←
すみません竹メンを書きたかっただけでした。
迷走中です(´・ω・`)