ろ組の教室に行くと、朝食の時からこっくりこっくり船を漕いでいた雑巾頭が完全に机にくっついていた。
鉢屋と雷蔵が話しかけると微妙に首が動くから、まだ意識はあるんだろうけど。
きっと次の授業は爆睡だな。

「はーちざーえもん」
「もにゃ…あ、カンえもん……」

もにやって何だよ。そして人を遥か未来の猫型ロボットみたいに呼ぶなよ。
とりあえず腹いせに笑いを噛み殺す鉢屋を蹴っておいた。
八左ヱ門は上の目蓋と下の目蓋が仲良くくっつくのを阻止するべく、ごしごしと手で両目を擦る。そんなことして赤く腫れたらどうするんだ。

「八左ヱ門ってば寝不足?」
「生物委員会の一年生が小鳥を拾ってきて、昨晩はその世話をしてたんだって」
「ふぅん」

雷蔵の説明に相づちを打つ。その丸い目が愛しさをいっぱいに湛えた眼差しを八左ヱ門に注いでいることは気にせずに。
たかが一晩寝なかったくらいでこれじゃあ、潮江先輩にどやされるぞ、とおねむの雑巾頭に言ってやりたいが、机にのばした腕でむにっとひしゃげた頬が可愛らしい。起こしたくない。
休み時間ももうすぐ終わるし。
日直の仕事でこっちに来れない兵助が拗ねるだろうし。
さっきから鉢屋の視線に殺気がこもってて痛いし。
おとなしく帰ろうかな。

「お休み、八左ヱ門」

剥き出しのおでこに口付けして、双子みたいな二人に吊し上げられる前に身を翻す。い組なめんなよ。
戸口でそっと振り返ると八左ヱ門が手をパタパタと振っていた。
さて、このにやけた面をどう兵助に弁明しようかな。


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なんとなーく似たような展開を見たことがある方がいるやも知れませんが気にしないでください←
一度FAのグリリンでやったのをリサイクルですごめんなさいでもちゃんと文章全部書き直したもん!


 


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