※探偵パロ
特徴的な赤茶けた黒髪を見た瞬間、ぐおぉと三郎が呻いた。
まるでそれに気付いてないみたいに勘右衛門は事件解決の功労者を素通りし、我が家自慢の犬を抱き締める。
「はち、久しぶり!」
「おう勘右衛門!」
自分より僅かに大きな体を抱擁し返して、ころころと笑みをうかべる八左ヱ門。更に三郎が呻き声をあげた。
勘右衛門は久しぶりと言ったが、実際は三日ぶりくらいだ。僕たちは何の呪いか頻繁に事件に巻き込まれ(しかもやけに血生臭いのが多い)、その度に勘右衛門はやって来る。あと、兵助も。
今は現場で指揮を執っているのであろう兵助がこの場にいないことだけが、三郎にとって唯一の救いかな。
「また事件に巻き込まれたんだ?」
「ああ。嫌になるよな」
「だからはちもこっちに来ればいいのに」
こっち、と言いながら丸い目がちらりと僕と三郎を一瞥する。勘右衛門が言いたいことは何となくわかった。
「疫病神とか言ったらぶん殴るからな」
目を据わらせた三郎が人ひとりは射殺せそうな眼光で勘右衛門を睨んでることなんて、背を向けている八左ヱ門は欠片も知らないんだろうな。
こっちって? なんて首を傾げてるもの。勘右衛門は笑って警察犬の飼育なんてどう、とか八左ヱ門を口説いてるし。
だから、犬猫をつまみ上げるようにその襟首を掴んで。
ぐいと引っ張ると、未だ抱き合ったままだった八左ヱ門と勘右衛門は意外に容易に離れた。
「はちは頭が足りないから、警察は難しいよ」
「雷蔵ひでぇ!」
自ら危険な現場に飛び込ませるなんて。
引っ張るついでにキツく抱き込んで、食えない警部に笑顔で以て牽制をかけた。
謎解き後のキスが終わってない三郎が悔しそうに視線を送ってきたけれど、その探偵が僕に突っかかるほどの勇気も気力も持ち合わせていないことを僕は知っている。
「勘右衛門たちの昇進が早かったのは、ある意味僕らのおかげなんだからね?」
僕ら、と言うか三郎だけど。
遠くから部下が呼ぶ声がして、勘右衛門は気だるげに肩を落とした。
「しょうがない。はち、いつでも待ってるからね」
勘右衛門が最後に八左ヱ門の額にキスを落としたのと同時に、三郎が爆発した。
おかげで、ぎゃああああ、と響く奇声の下で八左ヱ門がシェパードか、と呟いたのを僕以外は誰も知らない。
僕は秘密兵器を持っている。
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兵助出してあげられなくてごめんよ…!
実際、警部がどれくらい偉いのかよく分かってません←