※探偵パロ
あいつが犯人だ、と言ってはちが外したことはない。
それは野生のカンなのかにおいなのか、とにかく直感的な判断らしく、何のトリックも証拠も判明しないうちにはちは当ててしまうのだ。
しかし実際に当たっていたとしても証拠が無いのでは逮捕する訳にもいかず、私たちははちの意見を半ば頼りに、しかし完全に宛てにはせずに真犯人を割り出していく。
それがうちのやり方なのだ。
果たして今回もはちはその場にいた人間を一目見ただけで分かったらしい。いちおう全員に事件現場となった屋敷から出ないよう指示をして解散した後、いつも通りはちが雷蔵になにやら耳打ちしていた。
雷蔵はふわりと笑ってからまるで犬猫にするようにはちの頭を撫でた。
「三郎、はちが分かったって」
「ああ。あの髭面の中年だろう?」
「そうそう。よく分かったね」
なにも毎度毎度やり手の犯罪者にぶち当たる訳じゃあない。
それに今回は(今回も、と言った方が正しいのだが)休暇で来ていた山荘でたまたま事件に巻き込まれただけ、偶然なのだ。犯人もまさか探偵が来ているとは思わなかっただろう。気の毒に。
「早いとこ証拠を見つけて警察に引き渡そうか。勘右衛門たちに会う前に帰りたい」
「え、三郎と勘右衛門ケンカでもしたのか?」
「違うけど、はちだって疫病神扱いされたくはないでしょ?」
勘右衛門と兵助は若くして警察のお偉いさんである。学歴は私と変わらないくせに。それだけでも鼻持ちならないのに、事件に巻き込まれる回数がちょっと普通より多いからって疫病神と呼ばれては堪ったもんじゃない。
苦笑する雷蔵は未だはちの頭を撫でくりまわしている。
現に探偵だと名乗っているのは私だけだからあとの二人が遊んでいたって構わないのだが、こう目の前で、しかも仕事をしている傍でイチャイチャされると、気になると言うかなんと言うか。
「こら八左ヱ門!! 遊んでないで証拠の一つでも探せ」
「いたっ! なんで俺だけ殴るんだよ!?」
「この私が雷蔵を殴る訳がないだろう」
なんだよ理不尽だ、と地団駄を踏むはちの足元で絨毯のように敷き詰められた落ち葉が舞う。その下で煌めく刃物。
本当にはちは鼻が効く。無意識なのも恐ろしい。
おそらく凶器であろうナイフを回収すると、雷蔵がわあと感嘆の声をあげた。
「すごいねぇはち!」
「え、何が?」
自覚のない大型犬は雷蔵が懐から取り出したジャーキー代わりの飴玉を訝しげに舌で転がしている。
鼻ばっかりでお馬鹿なわんこを思いきり甘やかしてやる為にも、早いとこ全て済ましてしまおう。それに、これ以上二人の世界に入られては困るし。
「さァ、暴きに行こうか」
犯人へ、久しぶりの休暇を台無しにしてくれたお礼をしに。
その前に勿論犬っころにご褒美のキスは忘れずに。
謎解きは晩餐の後で
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まあ私は謎ディ読んでないしドラマも見てなかったけどね!←
面白いって聞いたのでまた読んでみたいなあ。