※バカ丸警報



髪の毛を毟り取られた。ぶちぶちっと音がして、頭のてっぺんに走る痛み。ぎゃっと叫ぶと同時に涙が溢れてきて、振り返るとやはりそこにいた金色頭を恨みをこめて睨んだ。

「何するんですかタカ丸さん!」
「んー? 何って、竹谷くんの頭からばっちいのを退かしてあげようと思って」
「ばっちくないですよ失礼な!!」

頭皮がヒリヒリする。
タカ丸さんは俺の傷んだ数本の髪を握っている。それをふと吹き散らそうとするが、俺の髪はしぶとく細い指に絡み付いたまま。
ザマアミロ。

「何も立花くんとは言わないよ。でも、せめて久々知くんくらいにはなってほしいなー」
「兵助と俺じゃ元々の髪質が全然違うじゃないですか」
「少なくとも久々知くんの髪はこんなふうに絡まないよー」

ぶちぶち俺の髪を引きちぎる、タカ丸さんはやっときれいになった指をひらひら振りながら口を尖らせた。

「最低限の手入れはしてますし、俺は髪とかあんま気にしないんで」
「僕が気になるの」
「なんでですか?」
「だって、ほら」

タカ丸さんはす、と自分の両足の付け根、つまりは股間のあたりを指差した。
下の話かと思ったが、そこは特に話題にするような変化は見られない。
訳がわからなくて首を傾げると、タカ丸さんはやれやれとでも言いたげに肩をすくめた。

「萎えてるでしょ?」
「はぁ」
「さっきまで勃ってたのに」
「はぁ。…は?」
「だから、さっきまでご機嫌に鼻歌なんか歌ってる竹谷くんの項を見て興奮してたんだけど、その酷い髪の毛を見た瞬間に萎えたの」
「意味がわかりません」

最初から最後まで訳がわからない。
俺が鼻歌を歌ってたのは認めよう、聞かれてたとか恥ずかしいけど。だけど、なんだよ項を見て興奮したって。そんでもって髪の毛を見たら萎えたって。
タカ丸さんの興奮するしないの基準もそうだけど、そこで俺の髪の毛数本が犠牲にならなきゃいけないのは何故だ。俺自身は何も悪くないじゃないか。悪いのはタカ丸さんの性癖じゃないか!

「仕方ないから、竹谷くんを喘がせる前に髪のお手入れを無料してあげるよ。さ、おいで」
「いやいやお手入れとかいりませんてか喘ぎません!」
「洗髪の気持ちヨさで喘ぐ前にイっちゃうってこと?」
「んな訳ないでしょおおぉぉぉ!!」
「いいからさあ早くっ」

タカ丸さんが、その細腕のどこにあるのかわからない怪力で俺を引っ張る。連行される先は、きっと風呂場。
タカ丸さんと風呂場なんて、俺の髪と貞操の危機じゃないか!

「大丈夫、イってもシャンプーに紛れてわからないから!」
「ふざっけんなあああああ」
「ふんふんふーん♪」
「鼻歌歌うなああああああああ!!」

さよなら俺の髪と処女。
俺がストレスとタカ丸さんの攻撃のせいで禿げたら誰か慰めてね。



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本当はもっと色っぽい感じにする予定だったのに…
竹谷に「俺を喘がせられるか、ヤってみますか?」とか言わせたかったのに…

あるぇ?(´・ω・`)


 


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