「まいったね、どうにも」

そう、白いシーツの上で呟いた。

いつもよりずっと早くに目が覚めてしまった僕は、手持ちぶさたに水でも飲みに行こうとベッドから立ち上がった。立ち上がろうとした。
とたんにガクン、と腰に重みを感じてまたベッドに戻される。なぜだろうと腰に目をやると、驚いたことに半田の腕が回されていて動けないじゃないか。
一先ず、なぜ僕らが同じベッドで寝ているかなんて些細なことは置いておくとしよう。

「はんだ…ねぇはんだ、はんだ!」

小さい、と言っても同じくらいの肩を乱暴に揺り起こすと、半田は迷惑そうに目を開けた。けれどまだ意識がはっきりしていないのか、うつらうつらと目蓋を開けたり閉めたりしている。

「う…んん……な、に」
「あのさ、離してくれる?」

敢えてなにを、とは言わずに僕は腰に回された半田の腕を指差した。そうすればいつものように顔を真っ赤にしながら慌てる半田が見れると思ったからだ。
だけど僕の予想に反して寝惚け眼で指差したそれをしばらく見つめていた半田は、更にぎゅううっと腕に力を込めた。いやいや。

「下に行きたいんですけどー」
「いかなくていいだろ……」
「そんな無茶苦茶な」
「……いろよ、ばか」

あ、それちょっとキュンとくるね。

「んん……マックスのばーか」
「……もう良いよ、半田馬鹿ってことにでもしといて」

諦めてもう一度ごそごそ潜り込んだ布団の中は、半田の体温とか半田の可愛いさなんかで溶かされそうに温かい。腰に回された腕すら、ぬくぬく。

「すきだよ、半田」
「おれも……」

この温かさに絆(ほだ)されて、ちょっと本音も出たりする。




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