※双子分裂 今日はこの時期に珍しくぽかぽかと日差しがあったかい日で、ちょうど気持ちのいい向かい風が吹くし、そりゃちょっと眠たくもなるわけで。 「ふああぁ……」 ベンチに後ろ手を付きながら座っていたオレは無意識に、くあっと大口開けて欠伸をしていた。 「ちくしょー…ねむい」 そんな意味のない悪態でもなんでもいいからしゃべっていないと完全に寝てしまいそうだった。 気を紛らせるためにグランドを駆け回り、掛け声を張り上げ練習している円堂たちを見ていると、その輪から1人士郎が離れてこっちへやってきた。 「アツヤ」 「士郎も?」 「うん、僕も休憩もらったんだ」 「そっか」 二言三言交わしあい、ベンチの隣に座った士郎。さっきまで空いていた場所に士郎がいるだけで心なしかぽかぽかと周りの気温が上がった気がする。なんだろう?安心感に、近い…? するとまた堪えられずに欠伸をしてしまう。 「アツヤ眠たいの?」 目敏くオレの欠伸に反応した士郎に嫌な予感がした。これはきっと兄貴ぶって、眠たいのは夜更かししたからだ!とか母さんみたいなことを言うに違いない。 「やっぱりね。昨日僕の言うこと聞かないで夜更かしてたアツヤが悪いんだよ?早く寝なよって言ったのにさ」 ほーら言った。 普段ならここで、うるせーバカシロウとか文句の1つや5つ口からぽんぽん飛び出るところだけど、そんなことに頭を回せるほど俺にはもう意識がなくなりかけていた。現に目は閉じかけているし、首がちゃんと座らないで揺れてしまう。 こくんこくん。 「文句言えないくらい眠たいの?」 「う…ん…」 「しょうがないなあ。ほら、僕に持たれてもいいよ」 「んー…」 そう言う兄の言葉に甘えて、薄い肩に頭を乗っけた。頭を預けてから自分より華奢な体をしている士郎に不安になって「重くねぇのかよ」とぶっきらぼうに訊いたら、髪の毛が首に当たってくすぐったいけど平気だよと微笑んだ。それを聞いてオレのなかで変な安心感みたいなものが生まれ、素直に眠気に身を任せられた。 「ほんとアツヤってば、ちっちゃい子みたい」 やれやれ世話の焼ける弟だとでも言いたげな口調だったけど、それと同時にどこか嬉しそうなのはオレの気のせいなのか? 完全に目を閉じると景色が見えなくなるかわりに、光がいっぱいになった。するとまたそよそよと良い感じのあったかい風が吹いてきて、ふわっと前髪を遊ばせる。 (もうちょいで、寝むれ、そう……) そんな瞬間ふと、俺の頭に柔らかさと重みが乗っかってきた。ああたぶん士郎も持たれてきたんだな、そう思うとさっきとはまた違う安心感が生まれて、 「兄ちゃん好き」 「僕も」 寄り添いながら眠るオレたちの姿を、円堂たちが微笑んで見ていたことをまだ知らない。 --------------------- 相互記念にジャム田さまに捧げます! ジャム田さま、相互そしてリクエストありがとうございました><* |