デートへGO

「うまれもった体格いかしてそのままいわれた料金で入場しちゃえばよかったのにー」

「全くです。折角の節約の武器を使わないなんて、本当に勿体無い」

「あ、にらんできた」

「お〜い。前見ないと転ぶぞ……って遅かったか」





本日は青空晴れやかな日曜日。お休みですから学校じゃありません。そこそこ大きくそこそこ栄えたとあるテーマパークに来ています。
週末取り付けられた約束にパニクる幼馴染みを引き摺って合流し、電車を乗り継ぎテクテク歩いて辿り着いたのは遊園地。男4人で遊園地。小さな子連れやラブラブカップルが行き交う中に男4人で遊園地。……むっさいわぁ。


デート行こうぜ!という程のテンションでは言えなかったようだが、総長さんに幼馴染を誘わせたのは俺と副総長さんの作戦だ。行った先で遊んで仲良くなれば良いじゃない、と。かなりアバウトな助言に飛び付いた総長さんを生温い目で見送って、それなりに格好良くお誘いさせた。までは良かった。
デートなんだから勿論二人っきりで後はノータッチのつもりだったのにそれは無理!と幼馴染に泣き付かれ何故か俺まで行く事になってしまった。うぜぇ。と思ったがなんと総長さんも副総長さんに付いてくるよう言ったらしい。アンタがそれでどうすんだ!……そんな訳で強制同行と相成りました。

遊園地と聞いた下っ端さん達も来たがったのだが、不良がゾロゾロ行ったら確実に子供が泣く。いや寧ろ大人(従業員)が泣く。という事でどうにか説得して諦めてもらった。こっそり付いて来たりしていないか副総長さんに探ってもらったが大丈夫のようで一先ず安心。……いや、だから何で俺がんな事してんだ。



折角の休日に何しているんだろうとやさぐれそうだが兎に角やって来ました遊園地。初っぱなから幼馴染が不機嫌です。
入場チケットを買う際、受付のお姉さんが、大人3枚小人1枚ですね。とにこやかに言ってくれたのだ。小人扱いが誰なのかは言わずもがな。その後幼馴染は、幼馴染の分も出そうとする総長を押しのけ、最早意地な様子で大人料金分を支払っていた。んで、冒頭の台詞となる訳です。


「あぁ、でも考えてみればそれで正解だったかもしれませんね」

「なんで?」

「不良×2、普通高校生1、子供1って、なんの集団だって感じでしょ」

「あ〜、ヘタすりゃこわ〜い顔した補導のおじさんに声かけられるね」

「ねぇ」


クスクスと笑っていれば、また馬鹿にされたと思ったのか幼馴染と総長さんが睨んできた。もうその話はしてないっての。
入口でグチグチ言っている幼馴染と不器用ながら宥めようとする総長さんを急き立ててパンフレット片手に遊具を回り始める。そうすればあっという間に機嫌を直すのだから単純だ。
数々のアトラクションを目にしては興奮する幼馴染みと、それを優しい目で見る総長さん。その後ろを少し離れてただ歩く俺と副総長さん。……やっぱり変じゃねこのグループ。
突っ込みたくなるのをぐっと堪えて奥の方へ進んで行く二人に付いて行った。






「総長さん、ジェットコースター苦手なんですね」

「そうなんだよねぇ」

「あ、知ってたんですか」

「どうやって回避しようかそーだんされたからねー」

「なのにアイツに誘われて断れなかった、と」

「あはははは〜」


グッタリする総長さんとそれに掛かり切りな幼馴染みには聞こえないだろうと好き勝手話す。聞こえていようが話すけど。

身長ギリギリのくせに絶叫系が大好きな幼馴染がノリノリで列に並ぶ後に付いて行った総長さんは、元々少ない口数が全く無くなっていた。特に俺等は気にしていなかったが精神的にギリギリだったらしい。全然気付かなかった。しかしそこは幼馴染み。顔が真っ青に引き攣っている、と異変に気付いて総長さんの手を引っ張り列から離れた。今はお昼時のフードコートで一休みをしている。
一応乗ることは回避できたけれど、お絞り片手に落ち込みっぱなしな総長さん。さっきと逆に、怯えながらも宥めようとする幼馴染み。違うテーブルで昼飯を食べる俺と副総長さん。やはり変な光景だとハンバーガーを飲み込んで息を吐く。


「無理なら無理と最初っから言や良いでしょうに」

「いやぁ、あきれられるのがこわかったんでしょ」

「?呆れるって?」



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傍観者
番外編,2,3
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