僕は分別のある大人だ。
全てを冷静な目で見て判断する。
人の命を預かる身としてそれくらい出来なくてどうする。
消えるとわかって尚愛さずにはいられないのならせめて依存などしないようになんとか感情に頑丈に柵を張るのさ。




「あ。」
全くの偶然だ。
扉を開けた先には彼に覆い被さる、男。
それで僕に気づいてガバッと上げた顔が見る見る青くなる。
冷たい床に土方くんの細くしなやかな四肢がだらりと投げ出されていた。
嫌なら抵抗くらいすればいい。
同意なのか。僕がいるのに平気でそういうことをする。
「失礼。」
仕方なしに踵を返そうとしたら例の男が僕と肩同士をぶつけながら逃げ去った。
「なんかごめんね。わざとじゃなかった。」
誰かいるとは思っていたけど。
僕に見下ろされた土方くんはぎろり、と睨んできた。
うっすら水気を含んで。
はだけた胸元に散らばる赤が僕を不快にさせる。
土方くんは微かにくちを開いた。
しかし柘榴の唇は吐息を零しただけでかぱっと閉じる。
「どうしたの?」
不審に思いながら差し伸べた手は宙ぶらりんなままで。

よいせとしゃがんで力のはいらないくたくたの手を少し持ち上げた。
そのまま、ぱっと離すとぺたんと床に落ちた。

湯のみがテーブルの上に一つ。
その下に横たわってもう一つ。液体が周りを汚している。


「盛られた?」
ベッドに彼を沈めた。
返事はない。

普段と違って拒まれないのを楽しみながら口付ける。
歯列を割って深くしてゆくとビクビクと震える体。

「あ…っふ、」
「以外と抜けてるよね、君。」
「ん…っ」
罵倒もない。
睨みつける瞳はやがて快楽にとかされていった。






「喋れるくらいにはなったかい?」
「へんなとこ…さわられた」
「え、今更そういうこと言う?」
「あんたにじゃない。」
どこに?と訪ねればぐいと手を取られて頬に触れた。
撫でるように動かされて胸元、脇腹に下りてゆく。
時折、熱い吐息をもらした。
「あと、こことか?」
「っあ…はあ…」
赤い印を強く吸うと伸びた手に絡め取られて、位置をずらされる。
「…こっちも。」
「へえ。」
眼前にさらされた白い肌に僕から印を贈る。
まるで独占欲の現れかなにかのようでおかしかった。滑稽である。
「冷たい…」
「冬だからね。」
「…ほんとは熱い。」
「コトがコトだからね。」
生きているなあ。
とつまらないことを思った。
僕の手で体を跳ねさせる。
歌うようにもれる声がとてつもなく愛しい気がしてくる。
「そんな顔すんな。」
「生憎生まれた時からこの顔でね。」
土方くんはくすくすと笑った。
君の我が儘に付き合っているのは僕なのに、酷い仕打ち。
むっとして手を動かして、余裕のない声を引き出す。
それに満たされて。

この先ずっと、僕と一緒に生きてくれないかと馬鹿なことを願った。







***

深く愛してしまうのが怖くて沢山言い訳する大鳥さんとそれは理解できてるけどもっと愛してほしい土方さん








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