別れの日は確実に近づいていた


今日も今日とて陰険なこの光クラブと称する汚い廃墟で行われる集会は私が参加するようになってから何度目になるんだろう。薄汚れた床に腰を下ろして何かに酔いしれ高々と両手を振りかざすゼラを見上げる。つまらない。実につまらない。ここ最近漸く念願だったライチというロボットが完成してからというものゼラは私に構ってくれなくなってしまった。残念ながら恋人という甘い位置関係にある訳でもない私がその不満を口に出すことなど出来るはずもなく。

「●●最近寂しそうだね。ゼラが構ってくれないから?」
「うるさい。あっち行って」
「きゃはっ!可哀想な●●!僕は毎日ゼラと愛し合ってるのにね!」
「しね」

目敏いジャイボは私の気にしてるとこをいつも無遠慮ノーモーションで突き回しにくる。でも私は知っているのだ。ケラケラと目の前で私を虚仮にするこいつの口から吐き出されるそれが戯言だということに。いくらゼラが思春期真っ只中の中学生男子だからってそこまで色欲に溺れてないんだよ。お前と違ってゼラはね。いい加減気付けよ。お前に向けられているその無機質な瞳にはなんの感情も宿っていないことくらい。まあ。私も人のことを言えた義理ではないがこいつよりはマシだと思う。

可哀想なジャイボ。盲目的にゼラを愛してしまった故にこんなになっちゃって。

「幸せそうね。あんた」
「とーっても幸せだよ?●●と違ってね!きゃはっ!」

そうね。私と違ってあんたは幸せそうだわ。私が好きなのはあんたなのに肝心のあんたは気付きもしないでゼラゼラと譫言のように繰り返して悦に浸ってる。羨ましい。純粋で素直で狡猾なあんたが私は羨ましい。

「●●も頑張ってその貧相な体でゼラにお願いしてみたら?」

ジャイボは笑う。まるで無垢な子供がそうするように。きゃは!と嬌声にも似たジャイボ特有の高めの声音が今も脳裏で鮮明に再生される度、私はあの日のことを思い出すの。

「僕の次点くらいにはなれるんじゃない?」

そう笑った彼はもういない。あの光クラブと呼ばれていた場所で誰にも見つかることなく愛した人の亡骸と眠っているのだから。ああ。現実って残酷ね。それが私が彼と最後に交わした会話だなんて。

title:zzz



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