悪戯と本気
23:16 14 Feb



「せぇーんぱい」

聞き慣れた声がしたと思ったら、同時に背中に軽い痛みが走った。
お前なあ、大体なんでいつもいつも、俺にちょっかいかけてくるんだ。
一応先輩なんだぞ、わかってるのか。
言っても聞かないことは悲しいかな、わかってはいたけれど、それでも注意すると狩屋は意外にもすんなりと頷いた。

「すみません」
「わ、わかったならいいんだ」
「先輩って感じがしないので、つい」
「喧嘩売ってんのか」

すたこらと逃げる狩屋を追いかけようとすると、隣にいた神童に止められた。
霧野、背中、背中。
苦笑しながら言う幼馴染みに首を傾げながら背中に手をやると、かさりと音がした。
嫌な予感がして、それをべりっと剥がす。
セロハンテープがくっついた、長方形の小さい紙。
隅には猫の絵がプリントされてある。

「……狩屋、なんだこれは」
「自分で考えてください」

考えろと言われても。
とりあえず、紙に書いてある通りにジャージのポケットに手を伸ばすと、一口サイズのチョコが二個入っていた。
市販の、大きな袋に何個ものチョコが入っているアレだ。
さっき背中を叩かれたときに入れられたのだろう。
だがなぜこんなことを、と口を開きかけたとき、狩屋がぱくぱくと口を動かした。
きょ、う、は、な、ん、の、ひ、で、す、か。
つり上がった瞳が俺を映す。
ああ、駄目だ。
いつもの冗談かもしれないのに、じわじわと上がる体温がひどく悔しい。
しばらくその場に立ち尽くしていると、心配そうな幼馴染みの声がした。
なんだい神童、顔が赤いとか、そういったことは言わないでくれよ。




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