その時オレは、心の底から絶望していた。違う。違う違う。これは何かの誤解だ。こんな現実認められるか。なんで、いつからこうなった?昨日までは普通だったのに。普通にいつも通り一緒に登校して、いつも通り一緒に昼食をとって、いつも通りくだらない話しながら笑いあって、いつも通り一緒に部活して、いつも通り一緒に帰った。家に帰ってお風呂に入って夕食を食べて適当に時間潰して寝る。そしてまた普通に一日が始まって何事もなく一日が終わるはずだったのだ。何もおかしい所はなかったはずなんだ。なんで、なんで、なんで、なんで。おかしいよ。ああ、おかしい。こんなことになって、オレは、彼がいないと、オレは、
「おかしいのは貴方もですよ」
耳元に聞こえてきた声。聞き覚えのある声。うるさい、うるさいうるさい。喋んないでくれ。その満面の笑みをオレに向けないでくれ。迷惑だ、不愉快だ。そうだ、お前もおかしい。こんな時にそんな笑顔でいられるなんて、ありえない!
「だってそりゃ、オレにとっては困ることじゃないですから」
黙れ黙れ黙れ!耳を両手で塞いで頭をぶんぶん振り回す。もう何も聞きたくなかった。これ以上誰かと喋ってたらオレまでおかしくなりそうだ。脳みそがぐちゃぐちゃに掻き混ざっていくようで何にも考えられなくなる。おかしい、おかしいよ。何もかも。全部。
「神童!」
ぴた。その声に頭を掻きむしっていた手も荒い呼吸も全て止まる。霧野、オレがそういう前に狩屋が声を上げた。
「なんだ?霧野」
「向こうで円堂監督が読んでるぞ」
「わかった。直ぐに行くよ」
あああああ。なんで狩屋、お前が神童なんだよ。神童はオレだ。霧野も、何で気づいてくれないんだ?そいつは狩屋だ。オレのふりする偽物だ。本物はオレなんだ。なあ、霧野。ああ、行かないで。置いていかないで。
「神童キャプテン。オレ、別にこのままでもいいかなって思うんです。キャプテンの真似するの簡単だし。」
目の前で、さも楽しそうに笑って去ってゆくそいつが悪魔に見えて無償に殺意が湧いた。こんなに自分を殺したいと思ったのは初めてだった。
狩屋、そこはオレの特等席なんだよ。お前じゃないんだ。
霧野も、お前ならわかるだろ?お前の隣で笑っているそいつはオレの姿をした、


「大好きだよ、神童。」


違う、そこにいるのはオレのふりしたただの外道だ。



フェイクゲーム
(偽りであった場合のふたり)



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マサキと拓人で入れ代わりネタ


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