「ランマル」
穏やかな小鳥のような声がして、後ろを振り向くと同時に頭にふわりと何かを被された。思わず目線が上にいく。
「花冠です。貴方にプレゼント。」
ニコリと笑ったジャンヌから、ふんわり甘い香りがした。ジャンヌの頭や肩には花びらといくつもの葉がくっついている。不器用な彼女のことだ、それだけでこれ一つを作るのにどれだけ手間と時間をかけていたのか手に取るようにわかった。
手に取ってよく見てみた花冠には白い花がいくつも絡み合っていた。
「…ありがとう。」
そう言うと彼女は目尻を細めて嬉しそうな、くすぐったそうな顔をする。
オレは目の前にいる愛らしい彼女に、同じ花冠を被せてやった。ジャンヌがぱちくりと瞬きをしオレと頭の花冠を交互に見る。
「嬉しいけど、それは君のほうが似合うよ。」
さらりと彼女の目に優しい淡黄色の髪を撫でながら言うと、ジャンヌの顔はみるみる真っ赤になっていった。これでもかというぐらい赤い頬がまるで林檎のようで思わず笑ってしまう。
「わ、笑わないでくださいっ!」
ジャンヌが真っ赤になったままぽかぽかオレを叩いてくるが全然効かない。彼女の頭が揺れ動く度、頭に乗っている葉がはらはら深い花畑へと戻ってゆく。

ふとジャンヌの赤子のような拳を避けようと身体を傾けたらそれにバランスを崩した彼女が背中から花畑に埋もれた。咄嗟に手を伸ばしたオレも彼女の隣に落ちる。
花の甘い香りに埋め尽くされた鮮やかな花畑に埋もれながらオレとジャンヌは数秒見つめ合い、同時にくすりと笑った。

心底幸せそうに笑う彼女は、まるで絵画で見た天使の様だった。
白い頬に触れてみた。滑らかな肌はとてもきれいで温かい。

しばらくそうして触れていると何だか目の前の彼女がどうしようもなく愛おしくなってそのまま強く彼女を抱きしめた。ジャンヌは抵抗せずにそっと背中に手を回してくれる。温かい。生きている。彼女はまだ生きているんだ。

このまま二人、同じ花畑の下で永遠に埋もれていたかった。

そうすればオレとジャンヌは、ずっと幸せなままなのだろう。


この先の自分に起こる未来をまだ何も知らない無知な彼女を抱きしめていると、目の奥が熱くなって、流してはいけない何かを流してしまいそうになるのだ。



(世界は99%の絶望と1%の優しさでできている)


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