居間でテレビを見ていたテンが暇をもてあましてあたるの部屋に来たのは夜の11:55を過ぎた頃だった。 金曜だったのでどうせあたるはラムと花札でもしてあそんでいると思ったのである。 しかし、ふすまを開けるとそこには一人で寝る準備をしているラムがいるだけだった。 「あれ、あたるのアホは?」 「出かけたっちゃ」 「こんな時間にかい」 「なんか、ものすごく大事な用事があるって言ってたっちゃ」 「なんやねん、それ」 その頃、当のあたるはというと。 「ちゃんと鍵開けてっかなー、あいつ…」 ロープ伝いにどこかの屋敷のバルコニーに足をつけたところだった。 どの窓にも灯りはともっておらず、屋敷全体はひっそりとしている。 あたるは忍び足で壁側に寄っていき、音を立てないように大きな窓の真ん中をゆっくりと押した。 キイ、と音を立てて向こう側に窓が開いたのを見てほっとする。 腕時計をちらりと確認する。58を指していた長針がちょうど目の前で一分時間を進めた。 「っぶね、ギリギリだ…」 窓を勢いよく開けると、重いカーテンがばさりと膨らんだ。 そっとサッシに足をかけて、カーテンの隙間から部屋に踏み出す。 起こしてしまわないように、ゆっくりと、と思いつつも、逸る心が足取りを急かす。 もう一度時計を見る。秒針はまだ半分回っていない。 無駄に思われるほど大きなベッドに、うずくまるように両手を顔の前に合わせて静かに吐息している寝顔がようやく見えた。 思わず顔が綻ぶ。 その顔がよく見えるように、すぐ前でしゃがみこむ。 降りている前髪をそっと避けると顔を出す見慣れた白い額にそっと唇を寄せる。 その腕に巻かれていた時計の針が、カチ、と音を立てた。 「誕生日おめでとう……面堂」 一番にいいたかったんですよねわかります。でもただの不法侵入のストーカーですほんとうに以下略 ×
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