▼ 5.きみを呼んでる
鳥を見ていて、そういえば、と、どう言うか考えていたことを口にする。
「……この耳、なんだと思う? お前、なんか言ってたけど」
「それは、きみのお姉さんと同じものらしいよ。おばさんが言ってた」
「……母さんが? 最初から、母さんに連れて来られたから、何か知り合いかなと思わなくはなかったけど、もしかして、そういう話があって、家に来たの?」
なんとなくの予想ではあったが、核心に近かったのか、ドゥロロは僅かに目を見開いた。そして、短く、うん、と言った。
「──最初は、きみを、殺そうと思っていた。きみから目を離さないようにと言われていた」
「それも、もしかして、母さんが……」
「……どうして、そういうときだけ、セイはやけに鋭いんだろう」
ドゥロロは、諦めたような、開き直ったような、複雑な表情だった。自分を裏切った、ということを悲しんでいる目だ。セイは彼のそんなところも気に入っていた。
ふと、セイは何か口に挟まっている、と思った。指で取り出してみる。細い小骨だった。顔を僅かに歪めてしまうのを悟られないように、少しだけ顔をそらした。
最も恐ろしいのは、自分自身であるのだと、だからこそ、周りを裏切らせているのだと、理解し、ひたすらに己を呪った。
その舌は、生ものの味で潤っている。それを、甘いと感じることへの戸惑いが、薄れるのを感じた。
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