▼ 3.大地を見下ろす鳥
気が付けば彼女を追っていた。話がしたいとか、近付きたいとか、そんな考えはなかった。
ただ、自分と同じような何かを感じたというだけだった。
同じくらいの見た目だからというのもあったかもしれない。
入院してからは、母も見舞いに来ないし、とにかく暇だ。
周りには、自分よりはるかに歳上の大人ばかりだったし、だから、おそらく、嬉しかったのだ。
しかし、彼女が入っていった部屋の前で、セイは立ち止まった。
なんとなく、これでは変な人ではないか、と、ようやく気が付いた。
いきなり声などかければ、嫌われてしまうだろう。
うまくいくなんて、思えない。だが。
「ちょっと、顔を見てみるくらい……」
好奇心に勝てず、ドアを開けた。
彼女は目を見開くこともなく、きょとんと、興味深そうに、セイを見たのだった。
まるで、来るのがわかっていたみたいに。
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