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  ある日の夜中。
まつりは、『彼』と夜道を歩いていた。
部屋に残して来た夏々都は、今頃ぐっすり眠っているだろう。
すぐに戻りたくなる衝動を堪えて、まつりは『彼』の方を向く。

「彼のご家族の事は」

『彼』は、心配そうに言う。
まつりは用意された車に乗り込みながら答えた。

「――知っている。昔に調べていたみたいだね。名前を上げるだけですぐにヒットしたよ。ある組織に所属していた事も、指名手配されていた事も、過去に起こした事件も」

  恐らく彼も知っているが、記憶から抜け落ちているのか……あるいはどうでもよかったのか。あの頃は……そう言った革命組織が今以上に存在した。
悪も正義も存在しなかった。
だから、まつりが善悪を語る事は出来ないけれど、
ただ、思うのは、彼は全く家族の深い話はしないという事。
 思い出そのものが抜け落ちているかのように、あるいは、何か嫌な夢を見ているみたいに、寂しそうに笑うだけである。


「中々の過激派だったらしい。政治家を撃ったり、建物を占拠して国の改革を訴えたり……服役を終えて母親と結婚したようだが、結局組織から足を洗っては居なかったようだ」
「――それで」
『彼』は、極めて冷静に続きを促す。
まつりも、なるべく平静を保って続けた。

「当初からずっと弟と関わることは一切なかったみたいだけど、
それでも今の家に来る前、弟が生れる前に一時期同居していた兄とは定期的に連絡を取っていたようだよ」

「一緒に居るところが何度か目撃されている。
この前も建物から出てくるところが監視カメラに残っていたようだが……組織の所有車だったという報告があった」

「お父様が……兄様と一緒に!?」

「弟の現状等も定期的に聞き出していたようだけど……父親の組織そのものが、兵器開発が進んでいるグループとも手を組んでいる。恐らく母親も。それとなく父親の事もあって促されたのだろうな」


それに――『あの兄』が、父親に従っていないわけが無い。



  まつりは腕を組んでため息を吐いた。
一応、家族の事は調べた。だけど、『ナナト』にどう伝えていいのかわからなかった。
一方的に暴力に合ったという構図ではない、家族も含めた世界全てが、彼を利用しているのだと。むしろ、彼が敵に回すのは身内そのものだという事。
事件の露呈を恐れているのは、彼以外の全ての身内だ。


  そんな父親と子を設けたのが母親であり、兄も父の傘下にある。

「まぁ、今解っているのは父親というのが、兄の――詠斗の父親が、という部分でしかないけれど」

そう、呟いてから、まつりはふと思った。
いつだったか、
彼の言っていた言葉を思い出した。




――母さんから一度も、父親に似てる、って言われた事が無いんだ。
変だよね。あの人に似てる、って、普通は父親か母親に似てるって、言われる筈なのに。



2023年12月2日0時26分