◇◇
『手筈?』
──そう、例えばこんな人は居ないかな?
登場人物の名前や、誰かからの評価を常に自分のものみたいに寄せてくるだとか。
名前や、特技、称賛。
──学園ものを書いてたら学園ものを書いてくるみたいな?
──そう、暗号やパズルを出したら、暗号やパズルを出して合わせてきたりね。
インタビューの発言を寄せて、後日自分のことみたいに語るだとか。
『天才じゃなくて普通の人を描きたい
って思ったんですよ』
モデルだったら、整形するだとか。
『見た目をどこか寄せてくるような──』
周りに、誰かと自分を同一人物だと勘違いさせようとしたり、
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いつだったか、まつりが言っていたことがある。
国を盾にして、才能を売る人が居るって。
「まつりは、いつも、窮屈そうだ。どうして、逃げないの?」
「わかんない」
「できないの?」
「もし。偉い人が居てさ、隣の国の政治家と繋がりがあって、その人の為の政治力が存在していてさ」
「うん?」
「その人が自分の参考にする為にお前の研究が必要だから、お前はずっと表に出ないでくれないかって言われたらどうする?」
「なにそれ、何の話?」
「もしもの話。もし、外にどんなに出ようとしても、国の偉い人も巻き込んで、国交の為に、荒立てたく無いから、たった一人くらい見殺しにするって言ったら、法案を通したりしたらどうする?」
「何それ、何の話?」
「たとえば、その偉い人の妹の延命の為に、その個人情報を偽装する為に、妹を作る為だけに、表に出ない出生情報から利用すると言われたら――――どうする?」
「どうして、そこまでして、その妹の為に、使うの? 国って、そんな事の為に、揺らぐものなの?」
「今起きている戦いの真実が、そうだとしたら?」
――――そういや、後に、これを、『戦争』と呼んだ人がいたっけ。
『加害者』の奴ら、妙に自覚的で、何故戦争はいけないかなんて、いきなり語り出すんだから、笑ってしまった。
まるで作家みたいだった。
今思うと、あの人と、あの人は、
同一人物だったのかもしれない。
「一緒に同じ場所に立つことは、お互いを同じ場所に立って支え合う事は出来ないのか?」
「存在出来るのはどちらか片方だけ。その為に、戦いが起きるんだよ。嘘がバレた時は『自分の子だった』と言い逃れる手筈を整えて」
家は既に見張られていて、
出生や個人に関わる情報も、売られている。
子どもたちは、産まれたときから、何処にも居ないんだって。