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──□……?


「でも、自分の、って。そんな。おかしいだろ」
同じ顧客層を食い合うなんて問題じゃない。
だってそれじゃただの甘えか乗っ取りだ。
 片側の搾取。
「そう。おかしいんだ」



――――同じ実力があるなら、他人を取り込むなんて効率の悪い搾取なんかしないと思わない?

「でもね、きっともう終わるよ」
「終わる?」
「うん。ふふふふ。今はね、茶番の真っ最中。もうすぐだよ」

『他人と合わせられるほどの実力すらも無い』って、
だから並んだり出来ない、というのが真実だって、

「今――――自ら出て来て、沢山の人達の前で、証明を刻み付けてくれてるところだから」



  事件の起きるより、何か月か前。
あの頃のまつりが何を見て居たのかは知る術がないけれど、どこかで得体のしれないものが動き出していること、漠然と、それはもうすぐ訪れるのだと、ぼく自身にも感じるようになっていた。
町はこんなにも平和なのに、そう、思った。


 でも何かが起きたとしても、せめて思い出だけは持っていたい。
 何気ない全ての日々を、全ての思い出を持ってあの日々の記憶を試みる。
 

あの頃。
ぼくは、ぼくたちは、何と戦っていて何から逃げれば良かったんだろう。
それは今もずっと、わからないままだ。

逃げて良いよ、と誰かが言ってくれると、そんな希望すら持って居なかった。






「そういえば、どうしてあの日、家の前に居たの?」


「なんでかな……」
「何?」
「なんでぼくは、屋敷に来てしまうんだろう」
「普通に、庶民の暮らしをして、そこそこの生活をして──それでいいはずなのに、おかしいって自分で、わかってるのに。懐かしいと、感じてしまうんだ。綺麗とか憧れとか、そういうんじゃなく──それもあるのかもしれないけど……懐かしいなって、なにか……大事なことが、あそこに在った気がする」