01
朝から酷い過呼吸になって、しばらく身動きが取れなかったり、やんだりと繰り返していた。
悪い夢をみてしまったので、今日はどこか不安定だった。
……なんで、あんな、夢を見たんだ。
部屋にいるはずの、幼馴染みを探したが、居ない。気まぐれなやつだから、きっとまたどっかで遊んでいるんだろう。
ぼんやりベッドに寝ていたら、しばらくして、とてとて、と足音が聞こえ、やがて、どーんと、塊がのし掛かってきた。
「っ……」
大きな瞳を潤ませて、ぱちくりとこちらを見る、幼馴染み。
「まつり、重たい、どいて」
茶髪を揺らして、そいつは首を傾げる。少年なのか、少女なのかわからないけれど、ぼくには、とても大事な幼馴染みだ。
「ななと、沈んでるね」
「お前がぼくにのしかかるからな」
「なにかあったの」
「少し、悲しい夢を見ただけだよ」
ぼくは言う。
まつりは、包み込むような柔らかい声で、どんな夢かと聞いた。
「大事な人に、裏切られていく夢、かな……」
「そっか」
まつりは、深くは聞かなかった。なにか思うところがあるのかもしれない。
「あっ、なかないで。ごめん、表現がよくなかったね」
「……泣いて、ない」
「目が赤くなってる」
ぼくは、答えない。
身体が震えているのを悟ってか、そいつはゆっくりと包み込むように正面から抱き締めてきた。怖い、怖くない、怖い。
まつりは、優しくささやくようにぼくに言う。
「あのね――異端が居場所なんか、求めちゃだめだよ」
わかってる。
込み上げてくるなにかを、ぐっと堪える。なんでだよ、と叫んでしまいそうになる。
唐突に、まつりは部屋から出ていった。
ぼくも、起き上がる。時刻は午前9時。
なんだか無性に、傷跡が懐かしい。痛みが恋しくなって、腕に強く、落ちていたナイフの刃を当ててみる。
しかし、あんまり痛くない。
つまらないからやめて、まつりを探して一階へと向かう。
なにかのしずくが、床にぽとっと落ちていたけど別に気にすることでもないか。
台所についた途端、引き返そうとしたぼくを、まつりが止めた。
「はーい、食べましょうね」
「要らん」
「食べなさい」
そいつは、背を向けるぼくを、ずるずると引っ張っていくと、無理矢理座らせる。
「椅子嫌い?」
「しゃがんでた方が楽だ」
「じゃあ、まつりの上に座る?」
ぼくは答えない。
ぐらっと、足元がふらついた。