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- ナノ -
 まつりがゲーム機を置いた。正面から座ったまま抱きついた状態になる。
「……ななとくん」

「はい」

「腕、どう? 痛い?」

「今は、痒くなってきた」
「お昼、何が食べたい?」
「まつりの手料理」

「ふふふっ」

「なに、笑っているんだ」
他人には興味が無い。
巻き込まれてとばっちり受けるのが嫌いだし。なのに。
「いや、なんでも?」

まつりは、クスクス笑っている。ぼくは、ただぼんやり、何もない天井を見上げた。昼間の部屋に差し込む、淡くて優しい、白い光。

「なぜだか、どこに居て、何をしてても、いつか絶対お前には会えるって気がするよ」

呟きが聞こえたのか聞こえてないのか、そいつはぼくを離して、たたたっと、冷蔵庫に向かった。
 もし、いつかぼくが死んでいたとして。それがなんなのだろうかと思う部分もあるし、嫌だなと思う部分もある。
いろんなことがあって、いろんな人が、居た。

 人は数ではないと語りながらも、本心ではたった一人や二人見殺しにすればいいと言い張っている人がいてもそれはそれでもしかしたら人間の性というやつかもしれないとさえ思えてきて、なんだか感慨深くなる。

人生柄、ぼくたちは自分を含めても、人の醜い面を沢山見たし、最初からいろいろ冷えきっているだから長い間諦めていたはずだ。浅ましい他人でも、軽蔑した気分になりながら傍観しようかと思っていたはず。
知らなければ今でも箱庭のなかで笑っていられたはずなのに。
(しあわせ、かぁ……)


まつりが、幸せなら、いいな。
もしそうなら、ぼくは、どんな痛みでも、きっと生きていける気がする。そしてそれを、ぼくは幸せと呼ぶことを恥じらわないだろう。

「何を考えてる?」

まつりが、囁くようにぼくに聞いた。
ぼくは、ふふ、と笑いながら、呟く。

「幸せになっちゃいけない人なんだ。ぼくは」

でもお前が楽しそうなら、幸せなぼくは。

「いつか。罰があたるかな?」
きっと。そうだろうな。




 ミンチとたまねぎを炒めている背中を眺めながら、やっぱりタコライスだ、と思う。こいつはこんな感じの料理が好きなんだよな……
そして、あの日。
初めて食べた料理だった。
「なに、見てるんだよ」

まつりは言う。
ぼくは、そっと目を閉じて、思う。

願いは、いつも変わらない気がする。

(まつりが、幸せだったらいいなぁ)

ぼくは幸せにはなれない。生まれたときからずっと、誰かが力づくで奪っていくのだ。