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 亜浅木シオリはうちなんかと違って、社長令嬢で、権力もある。
でも、学園じゃ浮いていた。
 噂だと、作った負債を旧社名の会社に肩代わりさせて倒産させ、新社名の会社に変えることで精算させる──そうやって来続けた会社の子。
「こういうところ」だとどうしても、少し周りが敬遠しているんですよね。うまく言えないんですが、格が違うっていうか。差別的な発言の意図ではありませんが、不安定な会社に居続けるためか、なんだかちょっと情緒が安定しないところがあるというのでしょうか……怖い、感じで、今よりずっと近寄りがたかった。
 なにか、それでも納得させられる人徳があるなら良いけれど、いづれ会社を任せられることになるならやっぱり愛想よくしなくちゃと、思うものです。しかし、シオリは這い上がって来た分、周りを警戒し、更に誰よりもプライドが高かった。

クラスで、ちょっと会社のことでからかわれたときなんて「私を潰すと言った!? 貴方を潰してやる!」とか喚くし、先生が止めに入ると
「あのね、大抵のことに耐えられるってのは、拘りがなくて鈍感な証拠よ。拘りがなくなったらおしまい。貴方たちみたいな平民のお遊びとは違うの!」とかって余計に燃えるしで手がつけられなくて……



 あぁ、あと、シオリの会社の傘下に居る猛者お嬢様が宥めるために「パパに貴方のところに嫌がらせされた、って言って縁を切るよ!」と言っても、怯みもしない。

「そう、まだ契約期間が残っているから待ちなさい。うちから今度からはあなたのとこに出資しないように連絡させてもらうからそのつもりで」

って──誰もシオリを止められないのですよね。挙げ句、「あーぁ! 客の無理難題を如何に角をたたせずにかわすかが、接客の基本。試してあげたのに、不合格だわ」なぁんて嘆く真似。とにかくなんでも一番になりたがり、目立ちたがり、先生から任された事は解らなくても手を挙げるのは良いけれど、助けてと言ってそのまま他の子に投げるなんてのもあって……
出来ない仕事なら、最初から出来ませんって断ればいいのに。






 ちなみに、そんな暴れ続けるシオリを無視し続ける子も居ましたよ。
それが彼女。でもシオリは目の前に居るのに自分にだけは話しかけない「彼女」が気になったんでしょうね……やがて独りぼっちに耐えられなかったらしいシオリは、あろうことか、勝手に「親友」と思い始め、私たちにもそれを吹聴してました。
「親友は、私を会社のことでからかったりしない」
「親友は、私をいつも理解してくれるし、私にも孤独なときがあるから、理解してあげられる」
バカ丸出しな台詞。周りの人に情報を募り、家族構成、好きな食べもの──彼女の身辺を調べるのをよく見かけて居ました。と、言っても彼女自体、どこかふわふわしていて、嫌われてはなくても、その、あまり具体的に誰かに自分の話をしなかったのですが。



──それから少しずつ、彼女は「誰かに見張られている」と、言うようになりました。

食堂でたまに会うと、なんだか不安そうにすることが増えて、私はというと今の今までずっと、食事のときくらいしか会話はしなかった。だって、シオリが親友(笑)している人に近付くとシオリになにされるかわからなかったから。ああいう……方は、虐めより怖いですよ。お気に入りには友だちを作らせないし、近付く人を徹底的に排除する。わりと居るんですよね、フレネミーっていうんですか?

恋人でも無いのに、厚かましく、親友の権限を奪う。ああいうのも、実質逃げられない虐めみたいなもんです。先生や委員会は間に入れないですからね。シオリの親友なんか絶望の代名詞。絶対嫌だっただろうなぁ。

話が逸れましたね、

──そうそう、それから少しずつ、彼女は「誰かに見張られている」と、言うようになりました。

「せっかく、逃げて来たのに」とも。

シオリと違って、私とは普通に話して居ましたよ。彼女が何を考えていたかは知らないけど。好きな相手の話とかもしました。

その際に「友だち、というのは、人間と会話する、のと違うの?」と言ってたからたぶん、人間、ととらえてるだけなんでしょうね。



 話を聞くに、彼女は昔から変質者に粘着されやすいそうで、彼女の兄がまずそうだったと。

 家ではよく彼女を見張り、見比べ、自分はそれより上のレベルだ、とプライドを保つ。

粘着質な性格で、ずっと気持ち悪かったとか、「お前は?」が口癖で、なにかがあるたびに「お前はどれ選んだ?」「お前だって◎◎してるじゃないか!」「お前はどうするんだ」と、いつも自分で考えず、見下しながら意見を聞いてきた。彼は不登校で、拗らせているため、妄想もあるらしくて……なんというか、大変そうでした。





 彼女が唯一逃げられる方法が、彼が苦手とする分野に進むことと、女学園に行くこと。
トランスジェンダーなんて言葉が出始めていましたが、今のところ、女性は女性、男性は男性という身体に合わせた制度が学校を分ける。
 この制度のおかげで、女学園に男性は逆立ちしたって入れない。彼女は、やっとおもりから解放されたって、そのことは喜んでいた。
学園で友達と居ることで、やっと兄の比較基準にしかなれないおもり役ではなく、『自分の存在』が保証される。
 年相応の女性で、自分の身分があり、自分の友人が居る。

それを、兄から切り離して、保証してくれる。

 逆に言えば、彼女は行く先に兄が居る限りは永遠に自分の存在を保証されないような気がする程に価値観や行動などを日頃から暗に所有物のように重ねられ比較されていたのでしょうか。なぜそんなことをするか聞いても、要領を得ない説明で「戦争してくる!」や「刑務所に捕まればいいんだろ!」と暴れ喚くだけで、一向にやめる気配はないらしくて……

 家ではずっと何をやっていても、身内が見張るから頭が真っ白になりそうだっていうのは言っていましたが。



 え? えぇ、もちろん、少数に関わる話ですよ。うまく言えない……やっぱり、承諾を得ずに勝手に全て話すのって、悪いので。

彼女にとって、見張られない、兄と重ねられない時間が唯一の幸せだった。



 シオリと彼女に何があったかは、断片的にしか知りません。

 しかし彼女は、見張られる感じがしているのはシオリのせいだと確信してるみたいでした。妄想かもしれない、でも、見張られているかもしれない、私もおかしくなったのか、

そんなことを言うようになって──
それから、ぱったりと、学園に来なくなった。
(2021/8/222:07─8/310:12加筆)



















─────────────────
【中略】

 私には、生まれて初めてできた幼馴染、大親友が居ます。
友達が出来ない私によくしてくれて、
仲が良くて、家族ぐるみで付き合いもあったりした。
ずっと仲良し。
これからも、卒業しても、就職しても仲良し。
そういう関係って、なかなかないですよね。
どちらかが遠くに住んでしまって疎遠になるというのが多い中、
ありがたいことに私は近くに大親友が居ます。

落ち込んでいたら、いつも助けてくれる人です。
そんな彼女が大好きです。
一生一緒に居ても疲れない、むしろ元気になれる!
一緒に温泉旅行とか行きたいなー!

ずっ友だよ!




……

校舎内に好きな相手が居るらしくて
悩んでて、でも同時に彼女、人間が苦手だからって言っていました。
 私と同じでコミュニケーションが苦手なだけで、本当はきっかけがないだけなんだと気付いたんです。(T0T)
それで私が独りぼっちじゃなくなったのは親友のおかげだから、彼女もそう、彼女も独りぼっちじゃなくなった。
 あの子、奥手だから……
でもきっと、私のことが好きなんだと思う。誰にも言えない相手だから、って、教えてくれなかったけど、確信しました。本人に言えるわけがない、悪いことをしてしまった。
(´д`|||)
でもね、可笑しいんです。
私が話しかけようにも彼女、ふとしたときに、いつも決まって■■■■に行くんですよ。かなりの頻度で。悩み始めてからもうずっと。
まるで■■■■の■■が好きみたいな頻度!あははは!(^◇^)
面白い子ではあったんですが、みんなで■■に話しかけなくても大丈夫だよ、って、激励を込めて■■の真似をして■■■■■■■■


 だから、ちゃんと目の前の気持ちを追いかけよう?そう、思ってみんなに手伝ってもらって■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■私が、彼女が恥ずかしがり屋なのを忘れて急ぎ過ぎて居たんだと思います……(^^;

仲直り、しなくちゃですね。
でもあまり良い方法が思い付かないんです、道で会ってもすぐ逃げられちゃうだろうし。彼女だって素直になるだけなのに。

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はあ?
あの子いつまで私を無視する!?
せっかく人が優しくしてやってるのに、どうして、恩を仇で返すのかな?
なんで私の優しさがわからない?
ふざけるなよ。
ふざけるな、おい。
おいお前、ふざけるなよ。
なに無視してるんだよ。
お前、優しくしてやってるのに、それが、どうでもいい? 全然どうでもいいとか思ってないんでしょ!?
適当なことばかり言ってムカついたとか、どうでもいい人だったら適当なこと言ってもムカつかない、結局どうでも良くなくて、
 私のことが好きだから曖昧なことを言われるとイラッとするんでしょ?
本当は自分に注目して欲しくて皆が自分に自惚れて欲しいんだよね?
最初から自分に興味を示さない人は、嫌だししつこいと大騒ぎするわりには、その人をキッパリ断ち切る事も出来やしない。
 それって私に期待してて、自分に注目して欲しくて、好きでいて欲しいからじゃないの?
あんたが一番面倒くさいよ、私からしたら!!!


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