ここにいても良いですか


(来良組)

(アニメ派の方にはネタバレあり)


私は、他人に寄生している。
依存と言えばまだ聞こえはいいけれど、私は他人に守られ、庇われることで生きている。
だから寄生していると思うし、現に昔の同級生の女の子はそのことをよく知っていた。

それは、彼女、張間美香も同じく。
私は彼女に寄生していたし、彼女もそんな私を思う存分利用していた。

それでいいと思ってた。

罪歌がいる限り、居場所がなくても孤独ではない。
額縁の外の鮮やかな世界を覗いているだけで、私は構わない筈だった。


「園原さん」
知らないうちに、随分考えすぎていたらしい。
並んで歩く帝人君が、私のことを怪訝そうな顔で見ていた。

紀田くんが言うには、帝人君は私に好意を持ってくれているらしい。
正直私も薄々は勘づいているし、本人も今更それほど隠す気はないようだった。

「具合でも悪いの?」
私が罪歌のことを彼に隠しているように、彼も何かを抱えている。
それは紀田くんも同じで、私達三人は未だに話せない何かを抱えた仲良しでいる。


そんな帝人君や紀田くんは、私が寄生していてはいけない人だと思う。
初めて私の額縁の内側に入ってきた、とにかく大事な人達だから。
うまく言葉にできないけれど、私は彼らが必要だ。
「ううん、ちょっと考え事してて…」
「そう」
視線を私から逸らせて、さっきまでと変わらない沈黙がまた私達の間に流れる。

紀田くんは風紀委員会が長引いているんだろうか。
夕焼けが、池袋を真っ赤に燃やしている。

「みっかどー!」
黄色い髪を風に揺らして、紀田くんが駆けてきた。
「おやおや、お二人さんいい雰囲気じゃないのー」
半分冗談で半分本気の、紀田くんらしい軽い言葉。

私は彼らが好きだ。
彼らにだけは寄生せずに、園原杏里という一人の人間として繋がっていたくて。

「露西亜寿し行こうぜ」
「園原さんは、どうする?」
「二人がいくなら、私も」

私はこの空間が好きだ。
少なくとも、今この瞬間二人は私を受け入れてくれている。

いつからか失くしていた私の居場所を、私はちょっとだけ見つけた気がした。

だから私は、二人のいるこの空間がいつまでもなくならないように、と願わずにはいられなかった。
もちろんそれは、とてもとても儚くて消えてしまいそうな願いではあったけれども。




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