夏恋フレーバー


(新神)

ジャンプを買いに行った銀さんが留守の万事屋で、僕たちはさっきまで扇風機の前のベストポジションを取り合っていた。
勝者はもちろん神楽ちゃんで、僕はその風のおこぼれにあずかろうと神楽ちゃんから少し距離を置いて彼女の後ろに位置している。

「新八ぃー」
「どうしたの?」
「とてつもなく暑いアル」
「扇風機の真ん前にいるじゃん」
「それでも暑いアル」

元はといえば先週沖田さんがひょこっと万事屋に顔を出して、居合わせた神楽ちゃんと大暴れしてエアコンをぶっ壊したせいだ。
明日には工事が入るのに、今日に限ってこの夏一番の暑さだなんて。
ジャンプを買いに行った銀さんは夕方まで帰ってこないだろうし、僕らは夜までの数時間を死にそうになって待ち望んでいる。

「暑いなぁ…」

どれだけうちわで扇いでも、汗が気化する一瞬だけしか涼しくない。
窓から差すジリジリとした日射しに焼かれて、蒸し暑さも増してるせいか部屋の中はビニールハウスみたいだった。

「そういえば…」
「何だよう新八ダメガネ」
「ダメガネ余計だから!せっかくいいこと思い出したのに言う気失せるんだけど」
「お前のいいことなんてどうせ大したことじゃねーダロー」

暑さにやられて苛立っている彼女は、ブツブツと何かを唱えている。
僕は彼女の悪口をいつもみたいに流して、冷蔵庫の前に立った。
ガラリと冷凍庫を開けて、大量の保冷剤の下に埋まっていたアイスを取り出す。
相変わらず文句を言っている彼女の後ろからそっと近づいて、袋に入ったラムネ味のアイスキャンディーを白い頬にピタッと当てたら神楽ちゃんの肩がビクッとした。

「な…!!」
「ほらね、いいこと」

不意打ちをくらったことがよっぽど嫌だったのか、僕の手からアイスを奪い取る。

「た、たまにはいいことするアルなダメガネ」
「でしょー?」

神楽ちゃんの指先が僕の手をかすめただけで赤くなってしまった僕が強がりでそう言って口にしたアイスキャンディーは、賑やかに口の中ではじけていた。



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