ドーナツ
理解している。そんな言葉がいちばん理解不足だ。
きみが悲しいことばを吐き連ねるあいだ、私は外の電車の音を聴きながら呑気にドーナツを食べている。
しつこさの無い甘さが心地よくて、ご機嫌になっている。
君の悲しいが、私にとって悲しくなんかないこと、きみは解っていない。
きみの悲しいなんか、私はちっとも悲しくないよ。
ほんとうに悲しいのは、きっと、居ないのと同じにされていることだ。きみの世界に、私は居ない。アテにされていないから、ノーカウント。居るのに居ない私はその度にきみに殺されてゆく。
残されたのは食べ終わったドーナツの様にぽっかりと、穴。
解らない、わからない。きみにはワカラナイ。
同じ様に突き放されて、私たちはまた言葉を棄ててゆくよ。
味方って、友達っていったい何だろうね。
そんな宇宙語しらないよ。私はもしかしたら火星人なのかもしれなかった。
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