月。結ぶ柘榴

街が忙しなく季節に彩られて、昨日かぼちゃが居た場所に今日は雪だるまが居る。そんな日々。
常に何かをやっていないと、人の世は静寂に殺されてしまうらしい。故に毎日が大戦争。考えるのはさし当たって捌かなくちゃいけないお仕事と、今夜と明日のごはんのこと。半ば強制的に繋がれた明日を生きるため。
そんな中わたしは思っている。通勤途中、仕事のさなか、ゲームの合間、流れる音楽の隙間。ずっとずっと、頭の中を巡ってやまないわたしのまんなか。

「なにをやってるんだろう」

最初からわたしは、ただただ不気味がっていた。
“保証がない”。目が醒める様な救いも、深く眠れる様な幸せも、何も、約束されてはいない。不安や恐怖を拭い去る術も碌に持ち合わせがないまま、不確定の未来を生きる。今も、生きている。
ようやっと気が付いた。そのことがあまりにも不気味過ぎて、その不気味さにずっと、わたしは凍えていたんだ。
冬。性懲りもなく訪れ続けた朝が運んだそれは、今年も変わらず冷たい痛みをこの肌に残してゆくけれど。反面、「だいじょうぶだよ」とも思っている。そう言ったら君は、どんな顔をするかな。その理由が君だ……なんて教えたら、きっと「当然」とでも言いたげな顔で頷くのだろう。満足だ。
君が居なきゃ、自分ひとりじゃ凍えたぶんも取り戻せない。あやふやで曖昧なわたしはまず間違いなく“にんげんふてきごう”なのだけれど。
ねえ、“うまれてしまった”失敗と向き合い続けることは、もう、好い加減重くて、息が詰まりそうなんだ。
生きてること。この心臓が動いていること、流れる赤も、少し高めな体温も。ぜんぶぜんぶ、ほんとうはこわくてたまらない。気持ちが悪くて泣いてしまいそう。
止めてしまいたい。やめてしまいたいくらい、ほんとうは、すごく。
なのに、それなのに君は、そうやって立ち尽くしたわたしの背中を支えていてくれたから。もう一度、進む勇気と名前をくれたから。わたしはなおもまだ、君のその名をここで呼んでいるよ。いつかすべてを諦めるその日まで、さいごまで、隣に居るのが君ならと。
今日も明日も明後日も、つまらない体を削ってしか生きられないわたしの隣にまだ君が居るのなら。その声がわたしを呼んで、その笑顔がわたしに向くのなら。君のその大きなてのひらが、何度でもまだ、わたしの髪に触れるなら。
交わす他愛ない言葉のすべてを、そっと預けた心のかけらすべてを“人生”と、“わたしの生きた意味”だと言ってみたい様な、そんな気がしたから。
互いに想う今が、あの日から変わらずにあったはずのふたりの今がこれからも。
はんぶんこで笑う、あたたかな日々が、これからもずっと。
そう月に祈ってみたんだ。

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