蝶々の詩

雨に濡れて落ちる化粧を気にしなくなったわたしは、きっと大人になった。
悪い意味で、たぶん、かなしい意味で。
薄っぺらな、だけど絶対的な殻を守りきることも出来なくなったわたしは、きっと弱くなった。良くも悪くも、たぶん。
休憩時間に飲むクリーミーラテはやさしい味。
それまでに起こった、悲しいような苛立つような出来事のすべてを濁して、そっと薄めてくれる。大人になったわたしは、そうやってたくさんの事柄を濁して、薄めて、許して、忘れていく。
なおも鮮烈に、痛烈に残って離れない感情だけをホンモノと呼んで連れてゆく。あの日のわたしなら、それをきっと、良しとは言えなかった。
お手軽にした化粧が落ちないことを願いながら泣いた、あの日のわたしは居ない。もう、居ない。
良い意味で、きっと、うれしい意味で。

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