ヒートテックの詩

寒いのはにがてだった。
空気が鋭い冬の朝、
差し込まない陽の光。
冷たく落ちる雨、
昏い部屋。
独りの夜。
君の不在。
「暖かくて良いよ」なんて君が教えてくれたヒートテックはまるで君の様だった。と、洗濯に出したきり乾いていないハンガーに掛かったままのそれを眺めて思う。
寒くて、寂しくて、泣いてしまいそうで。
それはもうとっくに、わたしに必要なものだったのだと気が付く。
鋭い朝を、
無機に灯る光を、
凍える雨を、
薄暗がりの部屋を、
せつない夜を。
どうにかこうにかひとりで越えていくための寄香だった。
わたしにはきみ(君)が、必要だった。

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