ホットミルク

もしものはなし。
君とわたしに境目が無かったなら、
鋭い言葉で君を殴り付けることも無かった。
もしも本当にふたり、その境目を無くしたなら、
きっと冷たい言葉で大好きな君を切り付けることも無かった。
けれどもしも。
君とわたしに境目が無かったなら、
こんなにも君を大切に想うことも無かった。
初めからそれがふたりに無かったなら、
そもそも君を好きになることさえ無かった。

その味をわたしは憶えている。
痛みの夜に飲んだ白い海。はちみつが溶けた、優しい味。あたたかなそれを今も憶えている。
探しているのは意味と理由。此処に居るだけの意味、そして理由。ただそれだけが欲しかった。それだってきっと、君がくれたら他にはひとつも要らなかったのに。巧く言えなくて、きっと明日も君を殴り付ける。何気ない君の言葉に殴り付けられた様な気持ちになって、また馬鹿みたいに泣く。そんなことを繰り返してでも明日君と居たい。
わたしと居たい。そう言ってくれた。
わたしは君を許したい。
痛みの夜に飲んだ白い海。
それは、君がくれた暖かさにとても良く似ていた。

[ 19/34 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -