冷たい朝、鈍く響く重みの中で

夢に見たのは、やわらかなクリーム色の朝だった。
おはようと笑顔を交わし合って、温かな白の優しい甘さにみんなでほっとする様なダイニング。
そこに居ても良いのだと、ただ安心出来る様なリビング。思い思いに夢を詰め込んだマイルーム。
帰りたい場所。帰りを待ってくれる家族。ここに居てもいい理由、その意味。“あたりまえ”の幸せ。わたしのホーム。
そんなものは幻想に過ぎないと知った。
そんなものは手に入らない。夢はいつまでも夢のままで、願いには届かず祈りにも成り得ない。
人並みの幸せを夢見ながら、とうとう願うことは出来なかった。このこころは神に祈らない。これまでも、これからも。
「子供はね、親を守りたくて生まれてくると思うんだよ」
「守りたい親を選んで子供は生まれてくるんだ」
「そう、きっとね」
そうであってと願った。そのための自分であってと、他でも無い自分自身に祈った。
子供がその親の元に生まれる理由を教えて、その時にわたしはさいごの役割を終えた。本来自分の子から教わる“ほんとう”にひとりで辿り着いたわたしに救いは要らない。そのための犠牲はわたしには必要無い。
人並み以上の幸せを手にして、人並みの幸せを諦めた。
ひとつだけかなしい。
わたしはかぞくにさいわいを渡せない。これまでも、これからも。
「ごめんね」を融かす暖かな雨は無く、今なお冷たい灰色の部屋の中に。

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