シネマコンプレックス
今日のことを考える前に今日が終わる様な毎日を生きている。明日なんて予想だにしていない。私たちにあるのは事実としてただある今日と知らぬ間に過ぎ去った昨日だけ。
恋について、愛について、友情について。
魔法について、戦いについて、人殺しについて考えることが出来るから此処は本当に素敵な場所。
本能的に感じてしまう爆音の中で誇大化した誰かの創造と、そこに融和してゆく自分の妄想に酔って泣いてしまえる。
此処はとってもとっても素敵な場所。
誰も皆、“知りたい”想いで此処に来る。知らない物語を、その結末を皆知りたいから、知りたくて待ちきれない人が此処に足を運ぶ。
いつだって、ただ考えて、考えた以上を知るチャンスが其処には置かれていた。欲しいのは時間。ただ夢中になって“それ”を考える時間。後は思案を拡げるトリガー。素敵な物語。それらすべてが其処にあって、私はそれをお金で買う。
真っ暗闇の中に座って、ノートとペンを持って待っていて。感じたことをその都度書いていってご覧。大丈夫、誰にも見えないよ。自分にさえね。これが少しばかり問題だけれど。
明るい場所に帰ってノートを開いたら、そこに得た答えがある。読める様な読めない様な文字に笑いながら、知ることが出来る。君に伝えることが出来る。
考える前に終わっていく様な今日のこと、それが昨日のことになっても、君に話してみたいんだ。そうやって一緒に来もしない明日を夢見ていたいんだ。
そんな優しさに満ちた場所、映画館。
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