どうぶつの詩

さいごのきみを ぱくぱくぱく。
もぐもぐ。ごっくん。
おもむろに、開かれた檻の中を見ればそこにもうきみたちは居なくて。
どうして居ないの?わたしが全部食べちゃった。さいごのきみも、さいごから二番目のきみも、三番目のきみももっともっと前のきみも。わたしがぜーんぶ、食べちゃった。
もう居ない。居ない。居ない。別の檻のきみたちも、もう食べきってしまったから、わたしはまたひとりぼっち。
あーあ、終わっちゃった。
そんなふうにね、さみしい気持ちが、いまさらになってわたしを襲うの。
さいごのきみの甘い余韻を口内に残しながら、わたしは宙を仰ぐ。
このさみしさだって、きみの味だってきっと明日になれば忘れてしまう。
霞んで零れて、
滲んで消えて。
それはきっととてもさみしい。
嗚呼、忘れたくないな。
この気持ちさえもきっと、明日には覚えていない。
感情の賞味期限はその時一瞬きり。
きっと今回は、味わいきったのだよね。
美味しかったよ。
ご馳走様でした。

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