※中原視点



本部ビルに帰って来てすぐ部下から"あいつ"が捕まったと知らせを受けた。
死んではいないと思っていたがあっさりと捕まったもんだ。
すんなりし過ぎて逆に怪しいが。
まあ裏切り者は死刑だと決まっている。
死ぬ前に今までの恨みを晴らしてやると意気込みながら地下室へと向かった。

かび臭い地下に繋がれたあいつは呑気に鼻歌を歌ってやがった。
俺の顔を見るなりあからさまに厭そうな顔をしている。
厭なのは俺の方だ。
何が悲しくて胸糞悪い奴の面なんか拝まなければいけないのか。
今すぐにでもぶっ殺してやりたい。
俺が話しかけると悪態をつくところは昔と何も変わっていない。
厭味ったらしくチビだのダサい帽子だの云ってる。
ただでさえイライラしているのに余計に腹が立つ。
聞くところによれば糞太宰は武装探偵社の社員になったらしい。
しかも現在その武装探偵社にいる人虎を芥川が探している。
そしてこのタイミングでの太宰の捕縛。
何か裏があるに決まっている。
しかし問いただすも飄々とした態度を崩す事はなくただ笑っている。
ますますイライラが募るばかりだ。

「ねえ中也、なまえは元気かい?」
「あ?手前がそれを聞くのかよ。置いてったくせによお」
「置いていった?人聞きが悪い。私は彼女に待ってもらっているだけだよ」

殴りてえ殺してえ。
なまえがどんだけ苦しんだか知らねえくせに。
織田が死んで太宰が消えて居場所を失ったあいつがどんな気持ちだったかも知らねえくせに。
今さら何を云い出すかと思えば。
絶対こいつにだけは渡さねえ。

先刻なまえに何処に行くのかと聞かれたが太宰が捕縛された事は伝えなかった。
伝えればあいつは絶対に会いたいと云うに決まっているし、再会して喜ぶあいつの顔なんて見たくない。
何があってもなまえを手放すわけにはいかない。
ずっと好きでやっと手に入れられる距離まで近づけた。
それを一度は手放したこいつなんかに渡してたまるか。

「ふざけた事抜かしてんじゃねえぞ。手前なんかに二度とあいつを渡すかよ」
「一体いつからなまえは君のものになったんだい?彼女は私のものだよ」
「手放した奴がよく云うぜ」

例え今此処でこいつを殺す事になったとしても渡すわけにはいかない。
悲しみのどん底にいたなまえを支えてきたのはこの俺だ。
苛立ちが爆発した俺は太宰へ思いっきり蹴りを入れた。
衝撃で後ろへ吹っ飛んだが如何やら攻撃を読まれていたらしく、寸前でガードされていた。
不本意だが元相棒ってのはやりにくい。
攻撃パターンを全て把握されている。
異能無効化のせいで異能力も使えない。
まあ体術が中堅以下のこいつになら異能力を使うまでもないが。
攻撃を食らってもなお飄々とした態度は変わらない。
こう云うところが余計に腹が立つ。

「どうせ手前の事だ、何か企んでやがんだろ」
「それはどうかなあ」
「けっ、そう云う態度が胸糞悪い」

殺してやりたいのは山々だが勝手に殺してしまうと流石の俺でも問題になる。
この苛立ちを全てぶつけてやりたいが、それはまたの機会にするしかない。
さっさと消え失せろと云い残すと落ちていた外套を拾い執務室へと戻った。

執務室ではなまえがいつも通りデスクワークをしていた。
お帰りなさいと花が咲いたみたいに笑っている。
何とも云い難い感情が込み上げて来て何も云わずに抱きしめた。
なまえは驚いていたが拒む事はなかった。
もし強引に俺のものにしたらこいつはどんな反応をするだろうか。
軽蔑するか?悲しむか?怒るか?
ずっと俺を受け入れてくれる事を待っている。
嫌われるのが怖くて、拒絶されるのが怖くて。
強引に自分のものにする事ができない。
でも四年前も今も変わらずこいつの事が好きだ。
馬鹿で能天気なところが可愛くて仕方ない。
だからなまえの望む事は何だってしてやりたい。
今の俺にできるのはそれくらいなのだから。









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