今日は少し遠出しようと思いルンルン気分で駅に向かった時に出会ってしまった。
券売機の前でキョロキョロしている探偵風の服装をした少年(?)に。
見るからに私より若いだろう。
何してるのかなーと思いながらも気に留める事なく通り過ぎようとしたが。
少年(仮)に服を掴まれてしまい気に留めざるを得なくなってしまった。
僕どうしたのかな、なんて聞いたところ滅茶苦茶怒られた。
如何やら私よりも年上だったらしい。
子ども扱いするなと現在は拗ねている。
完全に子どもじゃねーか、と思ったがこれ以上厄介な事になるのは避けたかったので云うのは止めた。
機嫌は悪いが服を掴む手は依然としてそのままだ。
面倒くさい事に巻き込まれたと肩を落としつつ如何したのかと問うと、電車の乗り方が分からないと云う。
本人曰く歳は26歳だそうだ。
26歳で電車の乗り方が分からないとはびっくり仰天。
あながち子ども扱いは間違いではなかったようだ。
切符を買ってあげた後に丁寧に電車の乗り方を教えたのだが。
降りる時も分からないと云われ、強制的にその人に着いて行く事になってしまった。
私の休日を返して欲しい。

人の少ない車内で、彼はまるで幼子のように車窓から外を眺め楽しそうにしている。
何だか弟に付き添う姉の気分だ。
とりあえず何しに行くのかと聞くと事件を解決しに行くと簡潔に答えられた。
探偵風の服装は当人の職業だったらしい。
探偵ならば電車の乗り方くらい分かっててもいい筈だと思うのだけれど。
マフィアなんてやっている私は探偵と名の付く職業と関わる事はない。
そう云った知識に疎い為こういう人もいるのかと流しておく事にした。

「探偵さんだったんですね」
「違うちがーう!!探偵じゃなくて"名"探偵!!そのへんの平凡な探偵と一緒にされるなんて心外だ」
「ご、ごめんなさい…」

何て面倒くさい性格なのだろうか。
ぶっちゃけ名探偵だろうが探偵だろうが大差ない。
本当にとんでもない人に関わってしまったようだ。
かと云ってこのまま放っておくわけにもいかない。
切符の買い方から何から何まで本当に知らないようだし、目的の駅まで辿り着いたとしても迷子になるのは目に見えている。
何処までお人よしなのだろうとため息をつきつつも乗りかかった船だから仕方ないと割り切った。
ここまで来てしまったのだ、最後までお世話するしかない。

「その顔、僕の能力を疑っているね。いいだろう、そんなに疑うんなら今ここで見せてあげよう」

ニヤッと笑ったその人は懐から眼鏡を取り出すと、そのまま掛けた。
この行為に何の意味があるのかよく分からなかったが、眼鏡を掛けた彼はなるほどと呟いた。
そして私に探し人がいる事を云い当てたのだ。
云っておくが私はそんな話は一切していない。
如何してそんな事が分かったのかむしろ私が聞きたいくらいだ。
当てずっぽうかも知れないが、しかし目の前の彼は確信を持って云っている様子。
まさか本当に名探偵なのか。

驚いている私に彼は「これが僕の異能力」だと云った。
とんでもない異能力を目の当たりにしてしまった。
今まで見てきた中でも凄いと思う部類に入る。
見ただけで瞬時に推理してしまう異能力なんて聞いた事がない。
思わず拍手してしまった。

「す、凄い!!」
「これで僕が名探偵だって事が分かってもらえたかな」

感動している間にも電車は目的地の駅についていた。
電車から降りるや否や予想は的中してしまい、名探偵さんはとんでもない場所へ行こうとしていた。
私がいなかったら如何していたんだろうとまたため息が出てしまう。
迷子になられては困ると思い手首を掴んで改札まで連れて行く。
駅まで来たのだから目的地に行くのもそう変わりない。
休暇の事は諦めて彼と一緒に事件現場へと向かった。

現場は裏路地で、そこには警察がたくさん慌ただしく動いている。
こんなところで私がポートマフィアの人間だとバレたら大変な事になるだろうなと思ったが何だかどうでもよくなってきた。
結局彼が事件をすんなり解決するまで私は現場にいる羽目になってしまい。
帰り道も名探偵さんと一緒になった。
今日の私は一体何をしていたのかと頭を抱える。
貴重な休みが台無しになってしまった。
しかし当人は全く気にしていない様子。
私に迷惑を掛けたと云う気はないようだ。

「此処からは帰り道分かりますよね?じゃあ私はこれで」
「ねえ君。お礼に一ついい事を教えてあげよう。君の探している人は案外近くにいると思うよ」
「えっ、それって如何云う意味ですか??」
「あーそれと、名前教えて」
「みょうじなまえですけど…ってさっきの如何いう意味ですか」

しかしそれ以上その人は何も云わず背を向け歩いて行ってしまった。
まるで嵐が去ったような気分だ。
近くにいるとは如何云う意味なのだろう。
太宰さんは案外近くにいると云う事なのだろうか。
けどポートマフィアを追われてる身だ。
横浜の地に留まっているとは考えにくい。
そもそもまだ横浜にいるならとっくに構成員が見つけ出しているだろう。
でも彼の「案外近くにいる」と云う言葉が引っかかる。
貴方は今何処で何をしているんですか、太宰さん。

「ただいまー」
「早かったですね、乱歩さん」
「ねえねえ太宰。みょうじなまえって子知ってる?」
「まあ知ってますけど、何で乱歩さんがその名を知ってるんですか?」
「別にーたださっき会っただけ。太宰の事探してたよ」
「へえ…」









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