本日も元気よく本部ビルの長い長い廊下をせっせと歩いている。
生きる意味を見失い、そして生きる意味を与えてもらったあの日から四年が経った。
二十歳を越えた私はそれなりに成長したと思う(もちろん胸も)。
私の身辺は大きく変わったが、未だに太宰さんの居場所や生死すら不明である。
身辺が変わったと云えば、中也さんがミミックの件からすぐに幹部に昇格し、それに伴って上司を失った私は中也さんの部下になり今では彼の一番の部下(勝手に思っている)としてそれなりに頑張っている。

織田作さんを亡くしてから塞ぎ込む毎日だったが、いつも傍に中也さんがいてくれた。
ふとした時に勝手に涙が出て止まらなくなる事なんて四年前は日常茶飯事だった。
そんな私をいつも優しく慰めてくれた。
自殺未遂を起こして以来、中也さんの心配性が酷くなり、また自殺でもされたら困ると云われ四年前から中也さんと同棲している。
そのせいかポートマフィア内で私と彼は恋人同士だと云う噂まで流れているのだ。
初めは否定していたが段々と面倒になり今では聞き流している。
まあ実際あの時告白されたのは事実なのだが。
ちなみに云うとあの時の返事は未だしていない。
今でも好きかと聞かれれば正直よく分からない。
嫌いではないのは確かだし、好きと云えば好きなのだが、その好きの意味が中也さんが私に対する好きと同義かと云われればそこは分からない。
中也さん自身もあれ以来何も云ってこないが、それは私を気遣っての事なのだろう。
お互いにもう成人し、大人になったのだ。
そろそろ真剣に考えていかなければいけないだろう。

先刻身辺が変わったと云ったが、一番変わった事がある。
それは中也さんの態度だ。
昔はやや控えめだったスキンシップが、今となっては遠慮がない。
流石にTPOは弁えているがそれでも事あるごとにキスしてくるわ抱き締めてくるわ、同棲しているのでそりゃ押し倒されるなんて事はよくある。
一応まだ恋人同士ではないので、最後までヤられる事はないがそれでも危うい。
最近では私は彼の抱き枕にされている始末。
こんな事をしているので傍から見れば恋人に見えて当然なのだろう。
私も抵抗はしているが、今までずっと傍で支えてくれている彼を拒み切れないと云うのもまた事実だ。
付き合ってしまえばいいのだろうが、恋愛と云うものはなかなか難しい。

「中也さん、資料をお持ちしました」
「ああ」

最近鎮圧した抗争の処理に今追われている。
報告書やら調査やら、しなければいけない事は山積みだ。
前の糞上司とは違い中也さんはきちんと仕事をしてくれる為私はとても楽である。
上司が優秀だとこうも楽なのかとしみじみ思ってしまう。

資料を手渡し元上司と比較しつつ中也さんを眺めていると、書類と睨めっこしていた彼が不意に顔を上げた。
目が合ってしまい慌てて逸らすがこっちに来いと云われてしまい渋々近づく。
案の定腕をグッと引かれて傾いた体はすっぽりと彼の腕に納まる。
こう云うの最近多いなーなんて考えていると顎を掴まれ目を逸らせないようにされてしまった。

「中也さんお仕事しましょう…」
「息抜きくらいさせろ」

ニヤリと口角を上げた中也さんは押し付けるようにキスをした。
逃げられないようにと腰を掴まれ更に引き寄せられる。
角度を変え何度も深く舌を絡ませる。
しゅるりと解かれた服のリボン。
一つずつ外される釦はやがて全て外れてしまい、下着が露わになった鎖骨に舌を這わせる。
跡を残すように吸い付き鎖骨にはいくつもの華が咲いた。

最近こう云う行為が増えたと思う。
恋人でも何でもないのにこんな事をするなんて、とモヤモヤしているが。
太宰さんの部下だった時も似たようなものだったと思うと何とも云い難い。
まあ太宰さんの場合は殆ど無理矢理であったが。
中也さんの前で太宰さんの話をすると怒り出して大変な事になるので決して口に出さないようにしている。
一度うっかり太宰さんの話をした時にはそれは酷い目に遭った。
元々嫌いだと聞いていたが、拍車をかけて嫌い度が増しているような気がする。
理由は分からないけれど。

中也さんに解放された私はムスッとしつつ服を整えた。
そんな顔すんなと意地悪そうに笑っているが、別に好きでされているわけではない。
いつも押し負けてしまい、これは不可抗力なのだ。
やるべき書類を突き出すと彼はまた目を通し始めた。
これが今の私の日常だ。
四年前とは何もかも変わってしまった。
だけど今も昔も私が幸せなのは変わらない。
織田作さんの事を思い出すと今でも胸が張り裂けそうに辛いけれど、それでもあの人を思い今も頑張っている。
四年前に太宰さんを総出で探したにも関わらず雲隠れしてしまった彼の所在は分からないが、生きていると私は思う。
今何処で何をしているのか。
いつかまた私は彼に会う事が叶うのだろうか。
いろいろな事を思いながら今日も私は中也さんの部下として生きている。









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