現在ドロドロの修羅場に遭遇している私はオロオロと困り果てるしかなかった。
如何止めていいものか悩みに悩んでいる。
そもそも私が廊下で倒れてしまったのが原因でこうなってしまったのだ。
元凶は私と云うわけでかなり責任を感じている。
私のせいならば私が止めないわけにもいかないだろう。
ここは勇気を振り絞って…
いやいやいや、やっぱ無理だ。
双黒の喧嘩を能無しの私が止められるといつから錯覚していた?
某死神代行並にチートじゃなければ不可能だ。
コマンドでも入力すれば私も無敵になれるのか。
誰か私にコマンド入力してくれ。

至極くだらない事であーだこーだと悩んでいたところ、二人の言い争いは苛烈さを増していた。
ここまで悪化してしまってはもう誰にも止める事はできないだろう。
それこそ首領でも呼んでこない限りは。

「蛞蝓(なめくじ)と言い争っている程私は暇ではないのだよ。さあ早く私と共に執務室へ戻るんだ」
「俺だって青鯖を相手にする程暇じゃねえよ。それにこいつは体調が悪いんだ、休ませてやれ」

そうして再び始まる論争。
全くもって埒が明かない。
こんな状況にも関わらず昼ご飯を食べていない私のお腹は悲鳴を上げているし、おまけに一睡もしていないお陰で強烈な眠気に襲われている。
こんなだから能天気と云われるのだろうが、生理現象に勝てる筈がない。
もう本当に如何すればいいのか誰か教えてくれ。

いろいろな問題が重なってまた目が回って来た。
これはいよいよやばいかもしれない。
空腹と眠気がピークに達している。
凄く世界が回っているような気がする。
元から世界は回っているのか?
如何やら限界点を突破したようで意味の分からない考えばかりが頭に浮かぶ。
そして案の定私はベッドにぶっ倒れた。
本日二度目である。

目を覚ました私は、先程と同じ天井を見つめていた。
まだここは医務室らしい。
気を失う前は喧嘩をしていたあの二人の姿は見当たらない。
気を失っている間(眠っていると云った方が正しいのか)に何処かに行ってしまったようだ。
時計を見るともう夕刻だった。
かなり眠っていたらしい、あの様子だと相当太宰さんは怒っていた。
どんな仕打ちが待っているのか、考えるだけで恐ろしい。
しかし戻らないわけにはいかない。
岩のような重い足を引き摺りながら執務室へと気持ちちょっとだけ急いだ。

執務室の前までやって来たのはいいが。
中に入りづらい。
いずれは入らなけらばいけないのだが、太宰さんの反応を見るのが凄く怖い。
死んでしまいたいくらい恐怖を感じている。
入った瞬間撃たれたりしないだろうか。
いや、その方がまだ幸せかもしれない。
織田作さん助けて。

渋々扉を三回叩いた後開くと太宰さんの姿はそこになかった。
出掛けているのだろうか。
ホッと胸を撫で下ろした。
私の寿命は少し伸びたらしい。
が、背後に立つ気配に鳥肌が立った。
やっぱりここで私の寿命は尽きてしまうようだ。

「遅いお帰りだねなまえ」
「あの…すみません…」
「別に倒れた事に関して怒っているわけじゃない。私が怒っている理由は他にある。分かるかい?」

医務室でダラダラしていたからなのか、それとも書類を全て片付けていないからなのか。
理由として思い当たる事は多々ある。
私だって好きで倒れたわけではない。
気が付いたら勝手にぶっ倒れていたのだ。
決して故意などではない。
体調管理をしっかりしていないのが悪いと責められればそれまでだが。

「その顔は如何やら分かっていないようだ」

ポカンとあほ面を晒している私を壁際まで追い詰めた太宰さんは。
壁に手をつき、その間に私を閉じ込めた。
完全に逃げ場を塞いできた。
逃げ場を失い身の危険に冷や汗が止まらない私などお構いなしに顔を至近距離まで近づけてきた太宰さん。
もう少しで唇が触れてしまいそうだ。

「中也と二人きりで何をしていたんだい?」
「中原さん?え、何で」

何でそこで彼の名前が出てくるのかと。
不思議に思ったが口にする前に唇を塞がれてしまった。
問うてきた癖に答えさせる気がないのか。
何度も角度を変えては深く舌を絡ませてくる。
酸素が不足して眩暈がするし、足ががくがくと震えている。
君は一体誰の部下なんだ、なんて聞かれたがそんなの太宰さんに決まっている。
如何してこんなにも不機嫌なのか私にはさっぱり分からなかった。









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