味わった事のないような激しい頭痛に無理矢理起こされ、渋々目を開けると。
此処は何処、私は誰状態だった。
服を着ていないのも、何処にいるのかも、裸の太宰さんが隣で寝ているのも。
誰かきちんと説明して欲しい。
昨夜ここで一体何が起こったのかを。
私は莫迦で能天気だ、そういつも周りから云われている。
しかしいくら莫迦とは云えどもこの状況を見て理解できない程ではない。
つまり私は太宰さんに抱かれたのか。
お酒を飲んだ後からの記憶が殆どないのだから本人に直接確かめるしか方法はないが。
正直聞きたくないし知りたくもない。
冗談抜きで私はやってしまったのか。

「おはようなまえちゃん。昨夜の事は覚えているかい?」
「へっ…それはつまり…やっぱり…そう云う事なんですか!?」

やっぱりそうなのか。
この人に処女を奪われてしまったのか。
初めては好きな人がいいって決めていたのに。
何で酒なんて飲んでしまったのか。
昨日の自分をぶん殴って止めてやりたい。
だから酒は嫌いなんだ。

「あまりに可愛い反応だったからつい激しくしてしまってね」
「…もうそれ以上何も云わないでください」

今すぐ死んでしまいたい。
もうこの際命を大切になんて如何でもいい。
誰か今すぐ私を殺してくれ。
ああ死にたい。

顔に両手をあて半泣きで唸っていると、隣の太宰さんは急に笑い出した。
人の初めてを奪っておきながら笑うだなんて本気で殺してやりたい。
太宰さんは慣れているかも知れないが、私は男性経験なんて全くない。
恋人すらいた事がないのだ。
モテモテの太宰さんに私の気持ちが分かるものか。

「いやー面白くってつい。冗談だよ。昨晩君との間には何もなかった」
「え…」
「本気で襲ってしまおうかと思ったのだけれど、最中に爆睡してしまったね。全く、爆睡されたのは君が初めてだ」

胸くらいは触ったけど、と太宰さんは笑っていた。
いやいや胸を触ったんかい。
立派な犯罪ですよ、それ。
強制わいせつですよ。

「人前で酒を飲むのはやめた方がいいねえ」
「太宰さんが無理矢理飲ませるからでしょ!?」
「だって君が断らないから」

自分の立場と私の立場を考えてください。
何処に幹部様に勧められた酒を飲めないなんて云える勇者がいるの。
笑い続けている太宰さんに一発ぶちかましてやりたい処だが、それができないのが私と彼の立場の違いだ。
何でこの人が幹部なのかと恨んでしまう。

「でも愛撫する度にそれは可愛らしい声で鳴いていたよ」
「ちょ、恥ずかしいんでやめてください!!」
「素面で丁度いい。合意の上なら今此処で抱いてしまっても問題はないと思うのだけど」

ベッドに押し付けられ鼻先が触れてしまいそうな程に近づけられた端整な顔に見つめられ。
思わず顔を逸らしてしまった。
どれだけのイケメンでも恋人同士でもなんでもない人に抱かれる程貞操観念は低くない。
実に愉快そうに笑っている太宰さんは私の首筋に軽く唇を落とした。
その行為に反応してしまい体がほんの少し跳ねた。
可愛いと云いながら今度は額と頬にそれぞれキスをしていき。
完全に私の思考は停止していた。

「嗜虐心をそそる反応をされてしまっては虐めないわけにはいかないだろう」
「もう本当にいい加減やめてください…」
「やーだ」

全然可愛くない、と心の中で突っ込みを入れながら必死に抵抗を試みるも敗北を喫してしまい。
散々太宰さんに弄ばれてしまった。
漸く解放された頃には日が高く昇っており、完全に仕事に遅刻していた。
織田作さんに何と云えばいいのか。
太宰さんの莫迦。
もう絶対に関わらない。

織田作さんに指摘されて初めて気づいたが。
首筋にキスマークが付いたいたらしく。
化粧室で散々太宰さんに暴言を吐いて織田作さんから貰った絆創膏を首筋に貼り付けた。
誰にも聞かれていない事を願うばかりだ。









人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -