気が重い。
とても重い。
美味しいものを食べに行くのにこんなにも気が重いのは初めてだ。
幹部である太宰さんとご飯だなんて。
それも二人きりで。
おまけに平手打ちを食らわせている。
いつ気が変わったと殺されても可笑しくはない。
如何して承諾してしまったのか。
幹部殿の命とは云え何とか口実を作って断れば良かった。
ああ、私の莫迦。

「やあ待たせたね」
「よろしくお願いします…」
「浮かない顔だねえ。そんなに私との食事が厭なのかい?」
「いえ、そう云うわけでは」

そうですよ、なんて口が裂けても云えない。
もうこれ以上余計な失態を演じるわけにはいかない。
ここは穏便に事を運ぶしかないだろう。
何を云われても肯定していれば機嫌を損ねる事はないと思う、多分。
私はやればできる子。
負けるな私。

お店に着くや否や完全にいろいろと負けてしまった。
こんな高そうな店に足を踏み入れる事自体初めてであったし、行った事もない高級レストランだ、マナーなんて知るわけがない。
ズラリと並べられたナイフやフォーク達。
どれから使えば良いのかなんて私が知る筈がなかった。

食事が運ばれて来ても未だに手を付けない私に太宰さんは外側から使うのだと教えてくれた。
意外や意外、それ以降もとても丁寧にテーブルマナーを教えてくれて。
慌てふためく私を莫迦にする様子は一切なかった。
生まれて初めて口にする美味しい料理達。
せっせと口に運んでいる様子を見て太宰さんは可愛らしいと笑っていた。
私が食べる様子を真正面からジッと見られ、居心地が悪かったが。
それでも料理があまりにも美味しかったので、そんな事は気にせずにひたすら食べ続けた。

一生分の美味しいものを食べた気分になった私だったが、驚愕の値段に目を丸くした。
桁が多すぎる。
その桁の多い金額をポンと払ってしまう太宰さんにもダブルで驚いてしまった。

「奢って頂いて、有難うございました」
「私から誘ったんだ、奢るのは当然の事だよ。それにこれは君へのお詫びでもあるのだから」

何となく彼がモテる理由が分かった気がする。
若くしてポートマフィアの幹部となった人だ。
噂を聞いている限りではとんでもなく恐ろしい人を想像していた。
が、実際は確かに何を考えているか分からない点で云えば恐ろしいけれど。
きちんとエスコートしてくれるし、何よりも優しい。
惚れてしまうのではないかと思うくらい優しいのだ。
これはモテて当然だと思う。

「さてもう一軒行こうか」
「まだ行くんですか!?」

強引に腕を引かれてやって来たのはお洒落なバーだった。
いや私お酒飲めないんですけど。
一度だけ飲んだ事があったが一杯目で酔っ払って記憶が飛んだ。
それ以来決して飲まないようにしている。
やばいぞ、これは。

「私、お酒飲めないんです…」
「そうなのかい?まあでも折角だ、一杯くらい呑み給えよ」
「いやでも…はい飲みます」

太宰さんが幹部じゃなかったら絶対に飲まないのに。
飲み給えよとか云われたら飲むしかないじゃないか。
覚悟を決めた私は目の前に出されたお酒を一気に飲み干した。

その後如何なったのか何も覚えていない。
グルグルと回る頭では何も理解ができていなかった。
何故か今、先ほどの店ではない処にいる。
いつの間にやって来たのか。
お酒のせいで何も考えられない。

「これ程までに弱いなんて思わなかったよ」
「ふえっ…な…あっ…」

首筋にザラっとした感触がする。
下着以外剥ぎ取られた私の上には太宰さんの姿があった。
首に顔を埋めて舐めたり時には吸い上げたりしている。
ブラの中に手を入れられやんわりと揉まれつつ先端を摘ままれ思わず声が出てしまった。
胸を揉みながら太宰さんは私の体を厭らしく舐め続けた。

私は今、彼と何をしているのだろうか。
甲高い声が時折聞こえるが一体誰の声なのか。
そうか、私が出しているのか。

「あっ…やっ…」

太宰さんが何か云っていたが、その言葉は私の耳に入る事はなく。
そのまま完全に酔いが回ってしまい深い眠りへと落ちてしまった。









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