恋人がドSなんですが | ナノ
何をされても笑顔で耐えなさい [ 1/4 ]

最近の私の悩みを聞いて欲しい。
些細な悩みかもしれないが私にとっては地球がひっくり返るような悩みなのである。
その悩みとは、ずばり恋人がドSと云う事だ。
友達に聞いてもらえば良いって?
そんなのとっくの昔に云っている。
だが皆口を揃えて云うのだ。
顔が良いからいいじゃない、と。
いやいや、良くはない。
ドSなあいつ―――太宰は事あるごとに私を虐めてくるし貶してくる。
やれまな板、やれぶちゃいく、やれ莫迦、やれ…
思い出すだけで私の中の何かがすり減っていく気がするのでこのあたりで止めておこう。
とにかくだ、いい加減彼のドSっぷりにも嫌気が差して来た。
そこで私は今まで弄られいびられして来たが、逆襲してやろうと思う。
太宰め、今に見ていろ。

「やあなまえ、胸は何処かに置いて来たのかな?」

海に沈めてやろうかこの野郎。
開口一番貶しやがって。
おめーのそのもじゃ頭を本当に海の藻屑にしてやる。
と、今までの私ならいろいろ云い返していたが、今までのなまえちゃんではないのだ。
お前の欲しがっている(であろう)反応なんてしてやらねーぞ。
へへんだ。
ニコニコと笑みを張り付かせ某賢治君のお話さながら、雨にも負けず太宰にも負けず丈夫な精神を持ち欲はなく決して怒らずいつも静かに笑っている、を決め込む事にしたのだ。
長々と何を云ってるのかと思っているだろうが、簡潔に云えば笑っているだけ。
何を云われても笑っているだけなのだ。
頬をツンツンされようが、引っ張られようがただ静かに笑っている。
有難う賢治君、私頑張るね。

「ヘラヘラと笑っているけれど、いくら君が笑顔を浮かべようが其の顔は変わらないのだよ?」

失礼過ぎて本当こいつの親の顔が見てみたくなってしまう。
何処でこんなに捻じれてしまったのか。
森さん、貴方の躾のせいですよ。
貴方のせいで私が被害を受けているんですよ。
ちゃんと責任とって下さい。
まじ慰謝料請求しますよ。

笑顔の下で殴りたい気持ちを抑えつつ森さんを妄想で殴ってみる。
実際森さんを殴ろうものならその前にハチの巣にされてしまうのは明白だが。
いやしかし、あの人がきちんと教育していればこんな歪んだクソ野郎が世に出てこなかったわけだ。
やっぱり森さんにも非がある。
大いにある。
今すぐ太宰諸共殴ってやりたい。

「今日のなまえは何をしても無反応か…うふふ、じゃあ人には云えないような恥ずかしい事をしても笑っていられると云う事だね」
「ちょっと待て、お前は何を考えている」

口を開いた瞬間太宰がにんまりと笑った。
やっちまったぜ。
まんまと太宰の策略に嵌まってしまった。
賢治君のお話は何処へ行ってしまったのやら。

しかし「ここからは大人の時間だ」なんて真顔で云われてしまってはいつも静かに笑っているわけにはいかないだろう。
全部太宰が悪い。
このドSめ!!!
じりじり迫りくる太宰に後ずさりして逃げるが、物凄く黒い笑顔を浮かばせた太宰から一体誰が逃げられると云うのか。
ボルトさんでも無理ですよ。

かくして私の太宰への飽くなき挑戦は続くのであった。


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