ある日のお話


※愛しさの向側の夢主。双黒に愛されてからのお話。太宰さんが変態です。




私とした事が珍しく(ちっとも珍しくないが)しくじってしまった。
敵の異能力者に何とデコピンを食らってしまったのだ。
何故デコピンなのかは私が聞きたいが。
デコピンを食らわされた私の額はそこだけ赤くなり。
会う人みんなに笑われてしまった。
おのれ異能力め、辱めるのが狙いだったのか。

そう思っていたのは昨日までの私。
今日の私はその真の異能力を目の当たりにした。
鏡の前に立ってているのは私であって私ではない。
いや、確かに立っているのは私なのだ、なのだが映っているのは何故か幼女。
私の顔にそっくりな五歳くらいの女の子だった。

「なななな、何じゃこりゃああああ」

酷い顔をして叫んでいる様子からして映っているのは如何やら私みたいだ。
こんな事になってしまった原因に心当たりがあると云えばやはりあのデコピンしかないだろう。
たかがデコピンなのにとんでもなく恐ろしい異能力だ。
戻す方法はあるのか。
もし戻らなかったらこのままなのか。
そんなの厭だ。
私の胸を返してくれ、大して大きくはなかったが。

「お前…なまえなのか?」
「はい…織田作さん…敵の異能力のせいでこうなりました…」
「しかし随分と可愛らしいな」

ヒョイっと抱き抱えられた私の小さくなってしまった体。
わーっと驚いたような声を出すと織田作さんは一言謝罪をしたが。
下に私を下す気はないようだった。
考えた末に織田作さんの出した結論は太宰さんの元へ連れて行く事らしく、そんな事をされたらどんな扱いを受けるか想像しただけで泣きたくなった私は必死に止めた。
しかし織田作さんが足を止める事はなかった。
白状者め!!

「え、織田作??その可愛らしい幼女は一体…まさか隠し子??」
「いや、これはなまえだ。敵の異能力でこうなってしまったらしい」
「ほう、それはまた愉快な事で」

太宰さんが物凄く楽しそうだ。
だからこの人に幼女となった姿を見られたくなかったのに。
絶対何か企んでいるに決まってる。
太宰さんから逃げるように織田作さんにしがみついていたが、あろう事か今から仕事だと云って太宰さんに私を差し出した。
太宰さんに抱えられた私は無情にも部屋を出ていく織田作さんに泣き叫ぶが、扉はパタリと閉まってしまった。
最悪な展開になってしまい涙が止まらない。

「私が触れても元に戻らないとなると、やはり元凶となった異能力者を直接如何にかする必要があるみたいだ」
「そうですね…」
「しかし可愛らしいねえ。私は何処かの誰かさんみたいに幼女趣味はないが、一度幼女を犯すと云うのも一興だとは思わないかい?」
「何とんでもない事をサラッと云ってるんですか。やめてくださいよ、犯罪です」

莫迦でかいソファーに寝かされた私の胸を触り出す太宰さん。
いやいや本気でやろうってんですかい。
くすぐったさに身を捩る。
更に胸が小さくなったといろいろ云っているが、体を触る手を止める事はなかった。
本気で誰か助けてえええええ。
織田作さん帰って来てカムバック!!

叫ぶ私の口を塞ぐように半ば強引にキスをした彼は厭がる私の口内に無理矢理舌を入れ絡ませてくる。
幼くなったからなのか、いつも以上に高い声が出た。
スカートから伸びる太腿に手が当たった瞬間、いよいよ本気でやばいと思った。
この人は本気で私を犯す気だと。
必死に暴れ抵抗している時だった、乱暴に部屋の扉が開かれ入って来たのは中也さんだった。
今にも犯されそうになっている私を寸前のところで助けてくれた。

「この変態野郎が!!手前は何してやがんだ!!」
「えー何って見れば分かるだろう?あ、中也はお子ちゃまだから分からないのか」
「本気で死なすぞ」

助かった、良かった。
本気でヤられてしまうと思った。
抱えられている中也さんの服をギュッと握り締める。
その瞬間抱えている手に力が入ったのが分かった。

「ふええ…中也さん…」
「よしよし、もう大丈夫だ」

扱いがまるで幼子をあやすようだ。
まあ実際、今の私は幼女なのだが。

「中也ばかり狡い、私もなまえを抱きしめたい」
「黙れよ変態、手前に渡したらとんでもねえ事すんだろうが」
「変態太宰さんは黙っててください」

もう厭だこの人。
何で小さくなっても尚、ヤられそうにならなきゃいけないのか。
しかしそんな事で諦める太宰さんではなかった。
私を奪い返そうとあの手この手で攻めて来る。
さすがの中也さんも太宰さんの攻撃に勝てなかったらしく。
私はまた鬼畜大魔王の手に落ちてしまった。
わーん、助けてください。

「こんなにも可愛らしいのだからずっとこのままでも私は構わないと思うのだけどねえ」
「厭ですよ。一刻も早く戻りたいです」

さすがに今度は何もしてこない太宰さん。
油断は禁物だが。
よしよしと頭を優しく撫でられる。
その優しい手つきにほんの一瞬だけ安堵するが、先ほどまで犯されそうになっていた事を思い出し慌てて警戒する。
何を考えているか分からない人だ、いつ変な事をしでかすか分からない。

「で、どうすんだよ。このままってわけにもいかねえだろ」
「敵の異能力者を探し出さないと如何しようもないからね。仕方ない部下に探させよう」

敵の異能力者が見つかるまで私はこのままいなければならないと云う事だ。
そんなの厭だ。
太宰さんがいつ何時襲ってくるかも分からないのに。
早く戻りたいよう…

「元に戻るまで中也さんのところにいます」
「何故だい!?こんな蛞蝓(なめくじ)よりも私の方がいいだろう!?」
「どの口が云ってんですか」

厭だーと必死にもがき中也さんに手を伸ばす。
厭がってんだろと男前っぷりを発揮してくれた中也さんの腕に再び抱えられ二度目の安息の地を手に入れた私は、今度は魔王の手に落ちまいと先程よりも強い力で中也さんにしがみついた。

「おい青鯖、もうこいつに近づくな」
「蛞蝓に云われる筋合いはないのだけど。そもそもなまえは君のものでも何でもないだろう?」
「手前のでもねえだろうが」

私を巡って最強と謳われている双黒が争っている。
やめて私の為に争わないで、とお決まりの科白を云うチャンスなのかも知れないが。
私はどちらのものでもありません。
私は私だけのものだ。

結局元に戻れたのはそれから数時間経ってからの事だった。
太宰さんの部下が非常に優秀ですぐにあの異能力者が見つかったらしく。
殴られて血塗れになったそいつがやって来たのはいいが、太宰さんと中也さんに更にこっ酷く殴られていた。
敵だが何だか同情してしまう。
もう二度とデコピンはされないと心に誓ったある日の事だった。





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