腐り落ちた愛情


※ポートマフィア時代、少々グロテスクな表現があります。



ずっと好きな人がいた。
大好きで堪らない人がいた。
かけがえのない人がいた。
今日、ついに私はその人と結婚する。
プロポーズされた時には嬉しくて泣いてしまった。
これから先もずっと傍にいて欲しい、支えて欲しいと。
彼は少し照れながら云ってくれた。
私は世界一の幸せ者だ。
だって大好きな人の隣にいられるのだから。

そう、あの時は思っていた。
これから待っているのは幸せな世界だと。
だけど現実は違った。
白で統一された悲しげな部屋に一人ポツンと飾られた人形みたいに椅子に座っている。

結婚式の当日、太宰に呼び出された私は何の疑いもなくそれに応じた。
ドレス姿の私を見て凄く綺麗だと云ってくれた。
有難うって照れ臭そうに云ったけれど、目の前にいたのは冷たい顔をした太宰だった。
何の表情も浮かべていない冷徹な太宰だった。
漸く身の危険を感じて逃げようとしたのだが、何かの薬品を染み込ませた布を押し当てられそのまま気を失ってしまった。

そして現在に至る。
私は太宰に監禁されているのだ。
逃げられないように足首には鎖が繋がれている。
如何してこうなってしまったのか。
何処で間違えてしまったのか。
太宰はあんなにも優しい人だったのに。
何が彼をこうさせているのか。
私には何一つ分からなかった。

「帰りが遅くなってしまって済まなかったね。寂しくはなかったかい」
「太宰、お願い此処から出して」
「それは聞けないお願いだね。君はまた私の腕から逃げてしまうのだろう。だったら此処にいればいい。ずっと私の傍にいればいい」
「私は…」
「そうそう、今日は君にとっておきのプレゼントを用意したのだよ」

きっと喜ぶはずだと、スーツケースから取り出したのは私の婚約者だった。
慌てて近寄り声をかけるが、気を失っているのか何も反応を示さない。
太宰は一体何を考えていると云うのか。
彼を見上げると愉快そうに口角を上げている、しかし目は笑っていない。
何処から取り出したのか、その手には刃物が握られていた。

「何する気…ねえ太宰!!」
「君がこの場で私を愛していると云わなければ彼をバラバラにして海に棄てる」
「なっ…狂ってる…」
「そうだ。でも君が悪いんだ。他の男と結婚しようとするから。だから私はこんなにも狂ってしまったのだよ。君の存在が私の生きる理由だったのに。君は私を裏切ったのだよ」

身勝手過ぎて言葉を失う。
その身勝手の為に彼が殺されるだなんて。
そんなの間違ってる。
如何して太宰はこんな事するの。
私には分からない。
貴方の何もかもが分からない。

「さあ、なまえは私の事を愛しているかい?」

刃物を彼の首筋へと当て私に問う太宰。
震える唇で私は「愛しています」と小さく呟いた。
すると楽しそうに笑った太宰は刃物を置くのかと思いきや、振りかぶると彼目がけて振り下ろした。
瞬間、彼の首が胴体から離れ床へと転がった。
血が溢れ出し私の服を汚す。

何が起こったと云うのか。
何で彼は首から上がないのか。
何で彼の首が転がっているのか。
分からない分からない分からない。

戸惑い動けなくなった私を首を蹴飛ばした太宰が抱き締めた。
何度も何度も深く口づけると、死体の転がるその部屋で私を犯した。
抱かれている最中に首だけになった彼と目が合い。
やっと理解した。
彼は殺されたのだと。
太宰と云う男の手によって。

「如何して、何で、何で殺したの…何で!!」
「こいつがいなくなれば君を惑わすものは何もなくなるだろう。なまえは私だけに惑わせれていればいい」

狂っている。
彼の言葉が理解できない。
太宰は何を云っているのだろうか。
君がこうさせたのだと。
君が彼を愛してしまったから彼は死んだのだと。
だから彼の死は君のせいだと。
何度も私にそう云った。

そうか、私が太宰じゃなくて他の人を好きになってしまったから。
全部私のせいなんだ。
ごめんなさい、好きになってしまって。
私と結婚なんてしなければこんな目に遭わなかったのに。
全部全部私のせいなんだ。

正常な思考が保てなくなった私は泣きながら太宰に何度も謝った。
その度に太宰は撫でてくれた。
その手に縋ってまた私は泣いた。

「安心し給え、もう絶対に逃がしはしないのだから」






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