近所に私よりも二つ上のお兄さんが住んでいる。

小さい頃からよく遊んでくれて私はその人が大好きだった。

いつからだろう。

ライクがラブに変わったのは。

それに気づいたのは中3の冬だった。



烏野高校。

昔、一度だけ春高で全国大会に出場したことがある。

"小さな巨人"と呼ばれたエースがいた時代。

私もここ烏野高校にこの春から入学した。

別にバレーがしたいからとかそんな理由じゃない。

単純に近所に住む大好きなお兄さんがここにいるからだ。



「考くん!!」

「おっなまえどうした?」



菅原考支、私のずっと大好きな人。

優しくて暖かい人。

でも気持ちを伝えるのは怖い。

考くんはもしかしたら私のことなんて何とも思ってないかも知れない。

告白してもし関係が悪くなってしまったらって思ったら。

あと一歩がどうしても踏み出せない。



「ううん、やっぱり何でもない」



私の意気地なし。

言っちゃえばいいのに。

考くんは優しいからきっと突き放したりしないと思う。

逆に優しいからこそ何だか悲しい気もする。

優しいから私みたいなのを構ってくれてるんじゃないかって。




「随分暗い顔してるけど…何かあった?」



顔近い!!

考くんの綺麗な笑顔が目と鼻の先にある。

効果音を付けるとしたらこうなのだろう。

ドキドキ、と心音がやけにうるさい。

このまま行けば心臓が破裂するかも…



「わわっ何でもないっス!!本当大丈夫だから!!!」

「本当に?」



逃げたのに。

何で考くんは近づいてくるの。

何で私に構うの。

そんなことされたら…



「勘違いしちゃうじゃない…」



しまった、思わず口に出しちゃった。

今の絶対聞かれたよね…

当の本人はなぜか無言だが。



「勘違いじゃないかもよ」

「へっ?」

「俺がこうしてなまえに構うのも触れるのも全部そういうことかもよ?」



なんて言いながらキスしてくるものだから私の思考は完全に停止してしまった。

考くんの唇すごく柔らかい。



「顔真っ赤。可愛いべ」

「わわわわ私も考くんのこと、すすすす好きだよ!!!!」



うん知ってる。

フワッとした笑みでそう口にしながら今度は頬にキスを一つ。

いつから知ってたの考くん。



「やっと言ってくれた」



考くんはどうやら私の口から言わせたかったらしく。

まんまとその策略に嵌ってしまったと言うわけだ。



「俺も好きだよ」



不意にそんなこと言うなんてずるい。










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