すたすか | ナノ



部活終わり、と言う部長の声で弓道部の空気は一瞬でなごんだ。
ちらりと宮地の方を見るといそいそと帰る準備をしている。こんな宮地を見る日はそう多くはない。これはまさか。

「あれれー宮地くんまたパフェでも食べに行くのかな?」

「っ、いいだろう!好きなんだから」

やっぱりそうだ。全くほんとにわかりやすい。

「毎日毎日よく食べるねー飽きない?」

確か月子ちゃんが朝見かけた時にもプリン食べてた(まさか一個だけではあるまい)らしいし、お昼に食堂で私が見たときにもケーキ(もちろん一個じゃない)を食べてたように思う。
糖尿病にでもなるんじゃないの?コイツ。

「飽きない。クリームは毎日新鮮だしうまいぞ」

「はいそうですか」

これ以上聞くと長くなりそうだっのでやめた。
いや、あきれるというよりは、むしろうらやましいんだけどね。普通仮にも女子であろうなら甘いものはいっぱい食べたいもの。でも、まあ太りますよね。知ってます。
はあ、とため息をつくとむ、と宮地がうなった。え、なんでコイツがうなる必要性があるのか。

「悩み事があるなら俺と一緒に食べに行けばいい」

「いやいやいやいや無理無理」

だからむしろそのことでなやんでるんですってば!
そんな私の悲痛な言葉も聞かずに手を引っ張られる。

「食べたら全部忘れられるさ」

「だから」

「俺は、」

お前に笑ってほしいんだ、と前を向きながら宮地は言った。
ほんとに、普通な顔してたっまに照れること言うなあ宮地は、とつい顔がにやけてしまう。

それを見た宮地がやっと笑ったな、なんて言うもんだから思わず顔が熱くなって、伝染した宮地も顔が真っ赤になって、ふたりして繋がれた手が急に熱くなった気がした。




「す、すまん」

「い、いや、全然」