すたすか | ナノ




僕が最初に先輩のことを自分の瞳に映した時、僕はなんて思ったんだろう。少し疑問に思い、記憶を辿ったらすぐ鮮明に思い出せた。褪せることのなく、僕の心で息をしている記憶だ。確かあの時とおんなじことを今、純白のドレスを着た先輩に僕は心の底から感じている。



「先輩、綺麗です」




お世辞なんかじゃなく素直な気持ちを先輩に知ってもらおうと伝えているのに、先輩はいつも照れるようにはにかみながら「ありがとう」と笑う。照れる必要なんてないのに。まあ、そんなところが可愛いんですけどね。そう言っていとおしくなって、白い手袋の上から口付けを落とすと先輩は真っ赤になった。



「いつまで真っ赤になるんですか」
「あ、梓くんが照れるようなことばっかりしてくるからでしょ」



もうあと何分もしたら先輩と、ずっと待っていた時を迎えられるというのに、僕の心は待ちきれないようだった。



「これから先もずっと、慣れる暇なんてできないくらいに先輩を夢中にさせますからね」



そう言うと先輩は「もう無理よ」といたずらそうに笑うから、意地悪をする先輩も可愛いなあなんて思いながら、その理由を問うた。



「なんでですか?」
「だって私はもう、梓くんに夢中だもの。他の人なんて見えないくらいに」



ね、なんて先輩可愛く笑う。………これだから、この人から、僕は目が離せなくて、執着なんてしたくなかった、できなかった僕は、この人を一生愛そうと思えるんだろう。いつもドキドキさせてやろうとしてるのに、結局僕の方がドキドキさせられてしまう。そんな先輩が、僕は。



「先輩はずるいですね」
「梓くんには敵わないよ」
「貴女に敵う人なんてこの世界中どこを探したっているわけないですよ」
「ふふ、どうして?」
「だって、この僕が選んだ最高の人ですからね」
「なら、その私が選んだ最高の人には、敵わないね」



二人して笑い合う。神父様から誓いの言葉が紡がれて、先輩の顔にかかっている白いベールをめくった。



「梓く、」
「…梓くんじゃなくて、梓でお願いします」
「あ…あ、ずさ」
「はい、よくできました」
「…じゃあ先輩じゃなくて、」



僕は、分かってます、と小声で零してから誓いの合図を聞いた瞬間、一番幸せな瞬間に、彼女の唇に自分の唇を重ねた。





「ずっと愛してます、なまえ」











( 好きなんですよ あなたのこと )