すたすか | ナノ



「雨だねぇ」
「雨だな」

学園の、中から寮まで歩く距離しかないとはいえずいぶん雨が降っている。朝天気予報では美人なアナウンサーが「降水確率は20%です」とかなんとか語尾にハートマークでも付きそうな勢いで言ってたのに。美人だからって信じたのがまずかったのか。でも誰だってあんな美人に晴れだって言われたらその時たとえ嵐が来てたって晴れだと思うと思うだろ普通。くそ、もう二度と美人なアナウンサーの言うことは信じない。あとあの番組の天気予報…って、どこの番組か忘れたわ、意味ねえ。


「哉太が課題出してないから手伝ってたら遅くなってどしゃぶりになっちゃったじゃん!」
「いやお前もだろ!俺だけじゃねえぞ!」


このなまえの様子を見るとどうやらコイツも傘を持ってないらしい。きっとなまえも朝、美人なアナウンサーの天気予報を信じて持ってこなかったんだろう。そうに違いないな!…でも少し、残念かもしれない。
……もし。もしどちらか一人が傘を持っていたとした、ら、


「相合い傘、なんてしませんよ哉太くん」
「な、んなわけねーだろ!」


な、な、なんで俺の考えてること、分かったんだこいつ!


「哉太の考えてることなんてお見通しですー」


ぶう、と頬を膨らませるなまえは雨のせいでなまえの肩と袖のブラウスが濡れて、肌が透けているのでなんつーか…その、かなり目のやり場、に困る。なるべく見ないように、見ないように…理性を保て、俺!


「いや、別にしてーとか思ってねーし!」


これ以上なまえに悟られないように全力で首を振ったのに、なまえはますますにやにやしてきやがった。なんでなんだよ!


「顔に出てるよ〜哉太く〜ん」


………そんなに顔に出てるのか、俺!?


「…う、う、っせーよ!」
「わっ」


もうなんか精神的に耐えられなくなったので俺のタオルをなまえの肩に被せてから、両手で顔を覆い隠して顔を見られないようにして雨のなかを走る。濡れてもどうでもいい気分になってきた!
そんな一種の解放感を味わっている俺に後ろからなまえの大きな声が聞こえてきた。雨の中なのに、そりゃもうはっきりと。


「哉太ーあ!!」
「…っなんだよー!!」
「タオルのお礼に傘入れてあげるから戻ってこーい!!」


なんだなまえのやつ、傘持ってやがったのか。なんだ俺の勝手な勘違いってやつか。あーそっかそっか……って、待てよ、それってつまり、




相合い傘、だよな?





「早く!びしょ濡れになるよ!」

自分でもわかるくらいに顔が火照って、今日わかったことはやっぱり俺って顔に出やすいんだなあってことと、美人なアナウンサーの言うことはやっぱりいいことにしかないってことだった。ありがとう、やっぱり毎日あの番組見ることにするわ。何チャンか忘れたけど。

「…おう」

「あー哉太照れてる」

「……るせっ」